マカオのカジノ全面禁煙化案、経済への影響有無で賛否分かれる

マカオのカジノ売上が昨年(2014年)6月から今年5月まで12ヶ月連続で前年割れとなる中、マカオ政府社会文化庁のアレクシス・タム(譚俊栄)長官は5月12日、政府としてカジノフロアの完全禁煙化を検討していることを明らかにした。現在、マカオのカジノでは、VIPルームが分煙、マスゲーミングフロア(平場)は禁煙だが、フロア内に喫煙ルームが設置されている。

タム長官によると、政府の目指す全面禁煙化とは、VIPルームを禁煙化し、喫煙ルームの設置も認めないとするもの。

マカオの政府系放送局TDMが6月7日、カジノ全面禁煙化及び喫煙ルームの設置継続の是非をテーマにした公開討論番組を生中継で放送。パネリスト、観覧者の間で、マカオ経済全体に与えるマイナス影響の有無について、大きく意見が分かれる結果となった。

パネリストとして登壇したVIPルーム業者らで構成されるマカオゲーミング仲介人協会の郭志忠会長は、マカオ全体のカジノ売上に占めるVIPルームの割合は56%と大きく、顧客は喫煙者が多いことから、全面禁煙化は災難ともいえる大きなインパクトを与え、マカオ全体の経済にもマイナス影響を及ぼしかねないと指摘。同協会は、カジノフロアの禁煙化には理解を示すものの、喫煙ルームの設置継続を求めている。

一方、マカオゲーミング企業従業員協会の蔡錦富総幹事は、目下、VIPルームは喫煙可能であるにもかかわらず、VIPカジノ売上の下落や一部VIPルームの閉鎖などが見受けられることから、禁煙のみが経営に影響を与える要因とは言い難いとした。

また、マカオ政府衛生局たばこ規制局の鄧志豪主任は、喫煙ルームを設置した場合、カジノフロアから完全にたばこの煙を除去することはできないとするWHO(世界保健機関)等の研究結果を紹介。

レスポンシブルゲーミング(責任あるゲーミング)協会の宋偉傑理事長は、マカオ経済のカジノ依存度は極めて高く、カジノ完全禁煙化案の是非を巡る意見対立につながっているとし、マカオ政府に対して産業の多角化を速やかに推進するよう求めるとした。

マカオにとって、カジノは屋台骨ともいえる産業となっている。マカオ政府の歳入に占めるカジノ税収の割合は昨年実績で約8割、仲介人(=いわゆる「ジャンケット」)及び仲介人パートナーを含むマカオのカジノ業従事者数はおよそ8万人程度いるとみられ、マカオの人口64万人の8分の1、就業人口40万人の5分の1を占める。

マカオのカジノ施設のマスゲーミングフロア(平場)に設置されている喫煙ルーム(資料)=2015年5月—本紙撮影

マカオのカジノ施設のマスゲーミングフロア(平場)に設置されている喫煙ルーム(資料)=2015年5月—本紙撮影

関連記事

最近の記事

  1.  マカオ司法警察局は11月22日、違法薬物密売及び使用の疑いで香港人の女(37)を逮捕したと発表。…
  2.  マカオ・コタイ地区にある複合リゾート「リスボエタマカオ(澳門葡京人)」併設のショッピングアーケー…
  3.  在香港日本国総領事館は11月22日、同月14日に澳門日本会に対する在外公館長表彰授与式が執り行わ…
  4.  マカオ市政署(IAM)は11月21日、マカオ半島のギアの丘(松山)に位置する史跡「松山軍用隧道(…
  5.  マカオ政府衛生局(SSM)は11月22日夜、同日マカオ域内で輸入性デング熱感染を新たに1例確認し…

ピックアップ記事

  1.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  2.  マカオのマカオ半島側とタイパ島を結ぶ4番目の跨海大橋となる「マカオ大橋(澳門大橋/Ponte M…
  3.  マカオ政府は6月17日、政府がコタイ地区の南東部に位置する約9万4000平米の国有地を活用し、約…
  4.  マカオの新交通システム「マカオLRT(Light Rapid Transit)」を運営するマカオ…
  5.  マカオで統合型リゾート(IR)を運営するサンズチャイナと米国のホテル大手マリオットインターナショ…

注目記事

  1.  マカオ治安警察局は3月5日、東京などからマカオへ向かう航空機内で窃盗を繰り返したとして中国人(中…
  2.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
  3.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  4.  日本も出場した女子バレーボールネーションズリーグ(VNL)予選第2週のマカオ大会が5月28日から…
  5.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年12月号
(vol.138)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun