マカオの大型カジノIRに進出した「HIDE YAMAMOTO」に注目=シンガポール発の高級日本料理レストラン

世界一のカジノ売上を誇る都市として知られるマカオ。近年、大型カジノIR(統合型リゾート)の開幕ラッシュが続いている。昨年(2015年)10月27日、大規模開発エリアにあたるコタイ地区にハリウッド映画がテーマというIR「スタジオ・シティ」が華々しくオープンした。

2つのホテル棟の中央に世界初となる8の字観覧車「ゴールデン・リール」を配する独特の外観をはじめ、開幕セレモニーにマライア・キャリー、ロバート・デ・ニーロ、レオナルド・ディカプリオなどワールドクラスの大物スターが多数駆けつけたことでも話題となった施設だ。運営会社の資料によれば、プロジェクト総工費は32億米ドル(日本円換算:約3900億円)にも達したという。

これまでマカオになかった要素を多数取り入れたIRとあり、注目すべき点は枚挙にいとまがないが、日本関連のトピックとして、世界を股にかけて活躍する人気シェフ、山本秀正氏がプロデュースする高級日本料理レストラン「HIDE YAMAMOTO」がマカオ初進出となる店舗をオープンさせたことが挙げられる。

HIDE YAMAMOTOといえば、数多くのレストランをプロデュースする山本氏にとって初の業態となる日本料理レストランとして2010年にシンガポールのIR、マリーナベイサンズ内にデビューしたことで話題になったのも記憶に新しい。店内に寿司、鉄板焼、炉端焼、ラーメン・ダイニング、バーのコーナーを設け、それぞれを得意とする職人によるハイクオリティな料理を提供する独特のスタイルで好評を博している。

本紙は開幕後およそ4ヶ月を経過した3月初旬にスタジオ・シティを訪れ、HIDE YAMAMOTOマカオ店の取材を行った。

HIDE YAMAMOTOマカオ店内観イメージ—本紙撮影

HIDE YAMAMOTOマカオ店内観イメージ—本紙撮影

店舗はリゾート中央に位置する大きなカジノフロアの外周部をぐるり一周するかたちで高級ブティックなどが建ち並ぶショッピングアーケードの一角にある。通路に面した大きな窓から店内を見渡すことができ、気軽に入りやすい雰囲気だ。店内に足を踏み入れると、正面に寿司カウンター、左奥に鉄板焼コーナーが見渡せた。真新しく、そしてモダンな和の落ち着いた雰囲気を感じさせるインテリアだ。

早速、同店の運営を任されているエグゼクティブシェフ、東野亮介氏にお話を伺った。出身は京都で、数々のアメリカにある有名ホテルで経験を積み、マンダリンオリエンタル東京からシンガポールのHIDE YAMAMOTOを経てマカオ店に赴任したと経歴を持つ。

東野氏によれば、店舗のサイズはシンガポール店の7つの個室を含む120席と比較して、マカオ店は1つの個室を含む80席とやや規模が小さいが、シンガポールのマルチコンセプトを継承した店造りとなっており、メニューもほぼ共通とのこと。シンガポール店で研鑽を積んだ各ジャンルのプロによるハイクオリティな料理を提供しているという。食材についても基本的にはシンガポール店で使うものと同じ鮮魚や肉を日本から空輸しているとのことだが、マカオ航空の直行便で日本からおよそ4〜5時間という地理的優位性もあり、より高い鮮度のものが手に入るそうだ。

開店以来、特に宣伝活動を行っているわけではないため、当初こそ集客に苦戦することもあったというが、昨年12月頃を契機に右肩上がりにゲストが増えているという。米CNNで注目のニューオープン店として紹介されたこと、スタジオ・シティを訪れる観光客や宿泊客が増え、ショッピングアーケードに活気が出てきたことなどが理由ではないかと見る。シンガポールとマカオは全く別のマーケットであり、ブランド知名度をいかにして高めるかがポイントと実感しているとのこと。

HIDE YAMAMOTOマカオ店外観イメージ(写真:Studio City)

HIDE YAMAMOTOマカオ店外観イメージ(写真:Studio City)

客層は中国本土や香港からマカオを訪れるギャンブラーをはじめとする観光客、地元マカオ人がほとんど。実際の平均客単価はランチタイムが200〜300パタカ(日本円概算:約2800〜4300円)、ディナータイムが600〜700パタカ(約8500〜1万円)だと明かしてくれた。価格面で敷居が高いイメージもあったが、クオリティを考慮すると十分にアフォーダブルといえるだろう。ちなみに、人気メニューは「自家製手打ちそば キャビア添え オリーブオイルの香り」、「生ウニとズワイ蟹 トリュフ風味の茶碗蒸し 銀餡かけ」、「特選黒毛和牛 鉄板焼」、「刺身盛り合わせ」、「ひな鳥 トリュフバター醤油のご飯詰め」とのこと。

昨今、数多くの高級日本料理店が軒を連ね、舌の肥えた食通が多い街として知られる香港でも同店の評判がクチコミ広がっており、わざわざ高速船に乗って同店を訪れるゲストもいるほどという。マカオでも日本食ブームとなっているが、まだまだ良質かつ手頃な価格のレストランが少ないことから、日本の食文化の発信拠点として独特のポジションを獲得する可能性を大いに感じさせてくれる。

マカオを訪れる日本人観光客は年間およそ30万人を数えるが、日本のカジノ解禁を見据えた自治体や企業関係者による視察も多く含まれるとされる。目下、HIDE YAMAMOTOはアジアで飛躍を遂げるカジノ都市であるシンガポール、マカオ、そしてフィリピン・マニラのIR内に店舗を展開する先駆者的存在であり、業界関係者からの注目度もますます高まると予想される。

世界初の8の字観覧車「ゴールデン・リール」が特徴的なスタジオ・シティ外観—本紙撮影

世界初の8の字観覧車「ゴールデン・リール」が特徴的なスタジオ・シティ外観—本紙撮影

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