カジノ税収大幅減も市民への現金配布継続に前向き、これまで8年連続実施=マカオ経済財政長官示す
- 2015/11/7 12:37
- 産業・経済
カジノ税という潤沢な財源を抱えるマカオ特別行政区は、インフレ対策や富の還元を理由に2008年から今年(2015年)まで8年連続で市民に対する現金配布を実施している。昨年下半期からカジノ売上の低迷が続くマカオだが、マカオ政府経済財政庁のライオネル・リョン(梁維特)長官は11月6日の記者会見で、来年度も現金配布の継続に前向きな姿勢を示した。
マカオ特別行政区による現金支給の金額は2007年から2014年まで段階的に増額されたが、今年は前年下半期以降のカジノ売上低迷の影響を受け、前年と同額に据え置かれた。今年の支給金額はマカオ特別行政区永久性居民(永久居留権保有者)が9000パタカ(日本円換算:約13.9万円)、非永久性居民(臨時居留権保有者)が5400パタカ(約8.3万円)で、実施にかかる予算は58.35億パタカ(約900億円)程度と見込まれている。
マカオのカジノ売上が昨年(2014年)6月から今年10月まで17ヶ月連続で前年割れとなっている。今年1〜10月の累計では1960.74億パタカ(約3兆226億円)と前年同期比35.5%の大幅減、今年度(1〜12月)財政予算目標の月平均200億パタカ(約3083億円)を下回っている状況で、マカオ政府は9月1日から緊縮財政措置をスタートした。
カジノ売上の低迷はマカオ特別行政区の財政にも大きなインパクトを与えている。1〜9月の累計で、歳入は前年同期比32.2%減の820.51億パタカ(日本円換算:約1兆2649億円)、このうちカジノ税収(税率はカジノ売上の約40%)は35.5%減の652.48億パタカ(約1兆59億円)で、歳入に占めるカジノ税の割合は実に79.5%に達している。なお、黒字幅は61.4%の大幅減となっているものの、財政収支は309.65億パタカ(約4774億円)のプラスを確保し、予算執行率はすでに164.7%となっている。
昨今のカジノ税収の大幅減、緊縮財政入りにあたり、来年以降の現金配布の継続の有無が市民の間で大きな関心事となっている。マカオ政府経済財政庁のライオネル・リョン長官は11月6日の記者会見でこの件について問われた際、今年度も財政収支に余剰が見込まれることから、来年度の現金配布の継続実施について自信を持っているとコメントした。険しい表情で記者会見に臨むことが多いリョン長官だが、この日ばかりは明るく笑顔も交えて回答し、市民もひとまず安心といったところだ。ただし、リョン長官は今年3月、財政黒字幅が縮小していることから、支給金額の減額の可能性に言及している。
マカオ政府は、現金配布のほかにも医療クーポン券の配布や家庭用電気料金の補助など、これまで市民が肌感覚で実感できる形での成果の分配を実現する政策を打ち出している。