近年、日本で大きな注目を集めているのが、カジノを含む複合型リゾート「IR」だ。実現には法整備が前提となるわけだが、地域振興の切り札としての期待も高く、誘致に高い関心を示す地域が全国に複数存在する。
21世紀に入って以降、アジアではマカオやシンガポールがラスベガス型の大型IRを誘致した結果、海外からの観光客と税収の増、雇用の拡大など、地域経済の発展につながったという実績がある。ちなみに、マカオのカジノ売上は2007年にラスベガスを抜き去り、現在まで世界一の座をキープしている。
5月17日から19日までの3日間、マカオでアジア最大規模のカジノ見本市「G2E(グローバル・ゲーミング・エキスポ)アジア2016」で開催される。
G2Eアジアは全世界からスロットマシン及びカジノ周辺機器メーカー、サービスプロバイダーなどが出展し、アジアを中心としたカジノ運営会社の関係者らが視察に訪れることから、ビジネスネットワーキングハブとして機能しており、今回が10回目の開催となる。
G2Eアジアには日本勢による出展も多いが、その大半はメーカーだ。今回、日本勢の出展者の中で異色の存在といえるのが、長崎県・佐世保市IR推進協議会だ。日本の地方自治体がなぜ海外で開催されるカジノ見本市に出展するのか、その狙いについて同協議会の北嶋弘記事務局長、長崎県企画振興部政策企画課企画班の貝淵裕幸係長にお話を伺った。
長崎県・佐世保市IR推進協議会は2014年3月に立ち上がり、現在は長崎県と佐世保市からそれぞれ2名ずつの職員を出し、専任の4人体制でIR誘致に取り組んでいるという。雇用機会の拡大、地域の発展、人口減の食い止め、県民所得の増が見込まれることがIR誘致を推進する理由とのこと。
IR誘致に名乗りをあげる複数の競争相手が存在する中、長崎県・佐世保市IR推進協議会では、地域の合意形成、県全体及び九州全体への波及効果、実現可能性が選定にあたっての判断基準になると考えているという。
長崎といえば、文化、歴史、食、自然といった観光資源に恵まれている上、佐世保市にある大型テーマパーク、ハウステンボスの存在が大きい。長崎県・佐世保市IR推進協議会が展示会向けに用意した英文資料では、ハウステンボスを活用することで、IR運営企業は大規模な投資、開発を必要とせず、比較的短時間でのオープンを可能とし、安定したマネジメント環境かつ国内外の旅客へのアピールを図ることができるといった点をメリットとして挙げている。
これまでに、米国ラスベガスやマカオを拠点とするIR運営企業が日本進出意向を明かしており、関係者が日本を訪れる機会もあったというが、訪問先は大都市が中心で、なかなか長崎にまで足を運んでくれないのだそうだ。ならば、自分たちから足を運び、IR運営企業のキーパーソンへの認知拡大とネットワーキングを図ろうということで、今回の出展が決まったという。
かつての大航海時代、マカオは東アジアの中継港として栄え、ヨーロッパの珍しい文物が長崎を窓口として日本にもたらされた。アジアにおけるカジノビジネスの中心地となった現代のマカオからIRという「舶来品」が長崎に上陸する日が来るかもしれない。