鳥取県がマカオメディア向け取材ツアー実施…香港〜米子直行便就航でインバウンド誘致期待=余震体験した記者ら復興支援へ想い

今年(2016年)9月14日、香港航空による香港国際空港と鳥取県の米子鬼太郎空港を結ぶ直行便(週2往復)が就航した。香港と山陰地方を結ぶ直行便が開設されるのは今回が初めてのこと。

鳥取県では、直行便の就航を機に、香港及び周辺のマカオ、広東省からのインバウンド誘致が期待されることから、今夏以降、一般層への周知拡大、旅行商品の開発などを狙い、メディア及び旅行会社関係者らを招聘し、県内の見どころを訪問するFAMツアーを複数回開催している。今年9月上旬にマカオで開催された大型トラベル見本市「MITE(マカオ国際旅行博)」にもブース出展し、同県出身の漫画家による作品で、県内にある2つの空港名にも採用されている「ゲゲゲの鬼太郎」と「名探偵コナン」を活用したプロモーションを行い、現地メディアから大きな注目を集めた。

10月23日から27日まで、MITEを通じて鳥取県の取材に高い関心を示したマカオメディアを対象にFAMツアーが実施され、大手日刊紙、月刊ライフスタイル誌、通信会社系ポータルサイトの記者や編集者らが鳥取県を初めて訪れることとなり、本紙も同行取材を行った。

鳥取砂丘(鳥取市)でらくだライドを体験するマカオの記者ら

鳥取砂丘(鳥取市)でらくだライドを体験するマカオの記者ら

折しも、出発2日前に県中部の倉吉市付近を震源とした震度6弱の地震が発生したが、記者らはツアー参加意志を示し、震源地に近い中部エリアの取材予定の一部に変更が生じたものの、他のエリアについては概ね予定通りに実施された。

ツアーは東部から西部に向かって観光名所などをめぐりながら進行。初日はマカオから到着後、鳥取市内に宿泊。2日目は浦富海岸、渡辺美術館、鳥取砂丘、砂の美術館などを取材後、三朝温泉泊。3日目は妻木晩田遺跡、大山寺、大神山神社奥宮、大山まきばみるくの里、大山フィールドアスレチック森の園など大山エリアから境港市へ、4日目は境漁港でベニズワイガニの競りを見学した後、水木しげるロードと水木しげる記念館、とっとり花回廊、イオンモール日吉津から皆生温泉へ。5日目は米子から関西国際空港を経由してマカオへの帰路に着いた。

境漁港(境港市)でベニズワイガニの競りの様子を取材

境漁港(境港市)でベニズワイガニの競りの様子を取材

マカオは面積約30平方キロ、人口約65万人という小さな街だが、東西文化が見事に融合した世界遺産建築群、21世紀になって登場した大型カジノIR(統合型リゾート)群、マカオグランプリをはじめとした国際イベントといった豊富な観光資源を抱え、海外(中国本土、香港、台湾を含む)からマカオを訪れる旅客数は年間3千万人(延べ、以下同)を上回り、アジア有数の観光都市として知られる。

観光都市マカオを拠点とする記者らは、鳥取県のインバウンド誘致への取り組みや県内の観光インフラ、地方銘菓(店舗、種類、パッケージング)に大きな関心を寄せていた。人口密度世界一という高度に都市化されたマカオでは、第一次産業の割合がゼロとなっており、海と山が近接する鳥取県ならではの農畜水産品や雄大な自然と触れ合う機会に対して大きな価値を見出していた。香港のテレビ局を通じてマカオでも「ゲゲゲの鬼太郎」や「名探偵コナン」が放映されていたことから、これらのキャラクターの知名度は高く、親しみもあるという。

大山まきばみるくの里(伯耆町)では名物ソフトクリームを味わった後、バター作りを体験

大山まきばみるくの里(伯耆町)では名物ソフトクリームを味わった後、バター作りを体験

一行は滞在2日目の夜、県中部の三朝温泉に滞在したが、旅館で夕食中に震度3の余震があった。地震を初めて経験するという参加者がほとんどで、最初は驚きの表情だったが、普段通りに接客する従業員の姿を見て、落ち着きを取り戻した。その後、夕食の話題は日本の建築物の耐震構造や、日本人の災害時の秩序ある行動などに及んだ。その後、温泉街を散策している際にも何度も余震があった中、参加者からは「必要以上に心配しない」との声が聞かれた。空を見上げて満天の星空が広がっているに気づき、こんな美しい夜空を見たのは初めてだと、感動した様子だった。

一夜明けた後、三朝温泉街周辺でもブルーシートを掛けた家屋を見かけ、大山へと移動の途中で通過した倉吉市外では、その数がさらに多かったのが印象的だったようだ。また、参加者は温泉街を行き交う人の姿が少なかったことに気づき、地震による風評被害により県全体で数千件にも上る宿泊予約のキャンセルが発生しているというニュースを知るに至って心を痛めたとし、自身が実際に見聞きした経験をもとに鳥取県の魅力を紹介し、安心して旅行に来てもらえるよう情報発信していきたいと語った。

渡辺美術館(鳥取市)では甲冑の試着体験も

渡辺美術館(鳥取市)では甲冑の試着体験も

マカオは伝統的な親日エリアとして知られる。今世紀に入って以降、大型カジノIRの開幕ラッシュが続く中、急速に経済発展を遂げてきた。1人あたりGDPはアジアトップ、月給中位数でも香港を上回る水準にまで達し、海外渡航意欲も高まっている。

JNTO(日本政府観光局)香港事務所によれば、昨年(2015年)のマカオからの訪日旅客数は前年比78.1%増の延べ8万4261人に達し、過去最高を記録したとのこと。マカオ政府統計調査局が公表した最新の運輸統計で、今年上半期(2016年1〜6月)のマカオ〜日本間の航空機による往来が来フライト数が前年の同じ時期から64.8%増の860回と飛躍的な伸長を記録していたことも明らかになった。

マカオでは、中国のマカオ特別行政区パスポートとポルトガルパスポートの保有者が大半で、いずれも観光を目的とした短期滞在についてはビザ免除の対象となっている。ジュネーブ条約締結国のポルトガルの統治下にあった名残で、マカオの国際免許証を持っていれば日本で自動車を運転することができ、レンタカーを使った国内旅行も可能だ。

マカオから鳥取県を訪れる場合、高速船でおよそ1時間の位置にある香港国際空港から米子鬼太郎空港への直行便(週2往復)か、マカオ国際空港からマカオ航空の直行便(毎日1往復運航)で関西国際空港に入り、バスや鉄道を乗り継ぐ方法などがある。

現在、香港とマカオを結ぶ海上橋、港珠澳大橋の建設工事が進んでおり、来年中の開通が見込まれている。橋の開通後、マカオから香港国際空港まで陸路およそ30分で結ばれることから、日本への直行便が多く就航する香港国際空港を経由した訪日旅行機会も増えると予想される。

お菓子の壽城(米子市)で鳥取銘菓の製造工程を見学。店舗デザイン、土産物の品揃え、パッケージングなどに高い関心を示した

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