マカオ新交通システム、必要ない人の優先席占用を罰金対象に
- 2017/3/6 15:49
- 社会・政治
目下、マカオ初となる軌道系大量輸送機関「マカオ新交通システム(LRT)」第一期の建設工事が進められており、2019年にもタイパ線(9.3km、11駅)が先行開業する見通しとなっている。
開業時期が近づく中、マカオ政府は今年(2017年)2月中旬から4月13日にかけて、LRTの管理運営、運営者責任・義務、乗客及び公衆の責任・義務、乗車券及び運賃制度等を含む「LRT法案」について、パブリックコメント(意見公募手続き)を実施している。
乗客の義務の中で、無賃乗車、盲導犬以外の動物の持ち込み、騒音や他人へ迷惑をかける行為などが罰金を伴う違反例として挙げられているが、「障がい者、高齢者、妊婦、赤ちゃんを抱っこした人のための優先席を占用(明確に席を譲る状況ではないとわかる場合を除く)」した場合も違反となり、400〜5000パタカ(日本円換算:約5700〜7万1000円)の罰金が科せられるとされ、物議を醸している。
現在、公共路線バスがマカオの主要な公共交通機関となっているが、優先席の利用に関して罰則はない。バスを利用するにあたり、席を必要とする乗客がいた場合、優先席に限らずどの席に座っていても、速やかに席を譲るのが「常識」として定着していることもあり、罰金という圧力をかけるやり方ではなく、常日頃からの道徳教育を通じてマカオの良さである譲り合いの精神を継承、拡大していくべきと考える人が多いためだ。
「罰」とされることで、優先席利用対象とされた人たちが「特権的」であると感じられ、その他の乗客との間で対立関係が形成されてしまうことや、例えば、外見上で障がいがあるとわかりにくい人、お腹の大きさが目立たない妊娠初期の女性、体調不良で気分がすぐれない人などが優先席を利用しにくくなることも危惧される。
マカオLRT第1期プロジェクトは、マカオ半島北部の關閘から外港フェリーターミナル、新口岸、南灣湖を経由して媽閣に至るマカオ半島線、媽閣から西灣大橋を経てタイパ島に入り、大型IR(統合型リゾート)が建ち並ぶコタイ地区を通ってマカオ国際空港、タイパフェリーターミナルに至るタイパ線の2線、21駅、21キロメートルで構成される。
同プロジェクトは、国際入札を経て日本の三菱重工と伊藤忠商事の共同体が駅舎と土木工事を除くLRTシステム一式を46億8800万パタカ(日本円換算:約667億円)で受注しており、マカオの公共工事として日本企業が獲得した最大規模の案件としても注目されている。東京の「ゆりかもめ」と同タイプ(クリスタルムーバー型)の日本製の鉄道車輌がマカオの街を走る予定。