マカオ政府が新型コロナ経済対策第2弾発表、約20万円現金支給や約7万円電子商品券配布など…域内消費喚起、雇用維持狙う
- 2020/4/9 11:20
- 産業・経済
昨今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が世界各地へ拡大しており、終息時期が見通せない状況が続く。
マカオは人口約68万人、面積約32平方キロという小さな街だが、インバウンド旅客数は年間3940万人超(2019年実績)に上り、アジア有数の国際観光地として知られる。
マカオ政府は1月後半以降、入境制限を含む厳格な新型コロナ防疫措置を講じており、インバウンド旅客が激減。インバウンド依存度が高いマカオ経済にとって試練の時期が続いている。
李偉農(レイ・ワイノン)マカオ経済財政長官は4月8日、政府新型コロナウイルス感染症対策センター定例記者会見に出席し、マカオ居民IDカードを保有する給与所得者に1万5000マカオパタカ(日本円換算:約20.4万円)を支給、企業に対し従業員数に応じて1万5000〜20万マカオパタカ(約20.4〜272.6万円)を支給、マカオ居民IDカード保有者に5000マカオパタカ(約6.8万円)分がチャージされた電子商品券を配布するなどの6項目から成る新型コロナ経済対策第2弾の概要を発表した。
給与所得者への支給はマカオ居民IDカード保有者に限られるほか、年収72万マカオパタカ(約981.0万円)以上の高額所得者と公務員は対象外となるが、マカオの就労人口の約7割が恩恵を受けるとのこと。5月から毎月5000マカオパタカ(約6.8万円)ずつ3ヶ月にわたって支給される予定。マカオの昨年通期の月給中位数は2万マカオパタカ(約27.3万円)。
企業への支給については、インフラ系、金融業、教育機関、ゲーミング(カジノ)業などが対象外となるが、個人事業主は対象とされる。対象となる企業数はおよそ4万社と見込まれる。ただし、6ヶ月以内に従業員を会社都合で解雇した場合には、その人数に応じて返金しなくてはならない。
電子商品券は2度目の配布。マカオで広く普及するICカード「マカオパス」の端末が設置された地元の飲食店、小売店、生活雑貨店などで使用することができ、使用期間は今年8〜12月の4ヶ月間。
このほか、失業者向けの給付金付き職業訓練、個人事業主を対象とした低金利融資なども盛り込まれた。経済対策第2弾にかかる予算は136億マカオパタカ(約1853億円)。域内消費喚起、雇用維持を狙ったものといえる。
なお、マカオ政府は今年2月時点で経済対策第1弾を打ち出し、一部はすでに実行済みだ。例年7月から9月にかけて実施される現金配布を当初予定の7〜9月から4〜6月に前倒し実施。支給額はマカオ永久性居民IDカード保有者が1万マカオパタカ(日本円換算:約13.6万円)、非永久性居民IDカード保有者が6000マカオパタカ(約8.2万円)。マカオ居民IDカード保有者に3000マカオパタカ(約4.1万円)分がチャージされた電子商品券の配布(第1回、使用期間5〜7月)。さらに、3月から3ヶ月間の家庭用電気料金と水道料金の全額補助(上限なし)、減税、中小企業支援などを含め、予算規模は約270億マカオパタカ(約3679億円)に上る。
マカオ政府は経済対策のみならず、市民が1日1枚のマスクを確実に入手できるようマスク有償配給制度を立ち上げ、現在まで継続実施している。
マカオ政府の財政準備資産高は歳出の5年分超に達しており、新型コロナ経済対策として有効に活用する方針を示している。カジノ税という潤沢な財源を擁するマカオだが、しばらくの間はインバウンド旅客の激減がカジノ税収を直撃するとみられ、2020年会計年度(1〜12月)の財政収支は赤字となる見通しで、財政準備から約389.5億パタカ(約5307億円)を拠出し、補填する策を講じている。
本稿執筆時点(4月9日午前11時)のマカオにおける累計患者数(感染確認)は45人。3月15日まで40日連続新規感染確認ゼロを記録したが、以降だけで35人増えた。初期の患者10人は武漢からの旅客7人とマカオ居民(「マカオIDカード」保有者)3人で、3月6日までに全員が治癒し退院済み。3月中旬以降に確認された患者については、すべて中国本土以外の外国からの輸入症例で、水際での発見に成功しており、市中感染例はない。