マカオ、新型コロナ経済対策で市民に配布の約4万円分電子商品券が使用開始に…後日約7万円分追加チャージも

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が世界各地へ拡大し、終息時期が見通せない状況が続く。

 マカオは人口約68万人、面積約32平方キロという小さな街だが、インバウンド旅客数は年間3940万人超(2019年実績)に上り、アジア有数の国際観光地として知られる。マカオ政府は1月後半以降、入境制限を含む厳格な新型コロナ防疫策を講じており、インバウンド旅客が激減。インバウンド依存度が高いマカオ経済は大打撃を受けている。

 マカオ政府は防疫策と同時に、幅広い層が恩恵を受けるかたちでの民生・経済支援策も打ち出している。このうち、域内での消費を盛り上げ、雇用維持を図るための経済支援策として初お目見えした「電子商品券」がきょう(5月1日)から使用開始となった。

 電子商品券の配布対象はすべてのマカオ居民IDカード(日本のマイナンバーカードに近い身分証)保有者で、年齢や所得といった制限は一切ない。事前にオンラインまたは指定のカウンターで申請を受け付け、申込者数は約65.8万人に上った。4月末日までに57.6万人が受領したという。

 電子商品券には、3000マカオパタカ(日本円換算:約4万円)がチャージされており、マカオで広く普及するICカード「マカオパス」の端末が設置された地元の飲食店、小売店、生活雑貨店などで使用できる(カジノ、公共料金、マカオ域外との交通機関など対象外あり)。消費期限は5月1日から7月31日までの3ヶ月間、消費額の上限は1日あたり300マカオパタカ(約4000円)までとなる。また、4月8日には、8〜12月分として5000マカオパタカ(約7万円)を追加チャージすることも発表され、1日あたりの消費額については5〜7月の利用状況に応じて調整もあり得るとした。なお、未使用分については公庫に返納される。

 2回合計8000マカオパタカ(約11万円)を約65.8万人が使用した場合の消費額は概算で約52億6400万マカオパタカ(約711億円)となり、内需拡大が期待されている。

 マカオ市民の間では、電子商品券の使用開始に伴う物価上昇に対する懸念もあり、政府経済局及び消費者委員会が小売店の巡回による価格調査やホットラインを設けるなどして対応し、悪質な値上げなど消費者の不利益につながる行為については警告を発出するとしている。

 このほか、マカオ居民向けの経済支援策では、毎年恒例実施している現金配布(1人あたり約14万円)を当初予定の7〜9月から4〜6月に前倒し実施、家庭用公共料金(電気・水道)3ヶ月間(3〜5月)全額補助、所得税減税などがある。民生支援については、市民が1日1枚のマスクを確実に入手できるようマスク有償配給制度を立ち上げ、現在まで継続実施中。さらに、中小企業や個人事業主を対象とした各種支援策も用意している。マカオにはカジノ税収という特殊な財源が存在し、近年の財政収支は大幅黒字。これまでに余剰金を積み上げ、歳入のおよそ5.8年分にも達する潤沢な財政準備を抱えており、政府は財政準備の一部を活用して新型コロナ対策に臨む方針を示している。

電子商品券を使った決済のイメージ=2020年5月1日(写真:マカオ金融管理局/経済局)

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