マカオ政府博彩監察協調局（DICJ）は12月1日、今年（2020年）11月のマカオの月次カジノ売上（Gross Gaming Revenue=GGR）について、前年同月から70.5%減、前月から7.1%減となる67.48億マカオパタカ（日本円換算：約880億円）だったとする最新統計を公表。

　対前年の主なマイナス要因として、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）防疫対策の一環で1月下旬から現在に至るまで入境制限を含む厳格な防疫対策が講じられており、インバウンド旅客数が減少していることが挙げられる。対前月での減少要因は、10月は月初に国慶節大型連休があり、営業日が1日多い（10月は31日間、11月は30日間）ことなど。ただし、このところ中国本土との往来制限の緩和が進んでおり（詳細後述）、対前年のマイナス幅は11月まで4ヶ月連続で縮小した。

　なお、11月の1営業日あたりの平均売上は2.25億マカオパタカ（約29.3億円）。新型コロナの影響下、2月（2月5〜19日の休業期間を除く14日間）は2.22億マカオパタカ（約28.9億円）、3月は1.70億マカオパタカ（約22.2億円）、4月は0.25億マカオパタカ（約3.3億円）、5月は0.56億マカオパタカ（約7.3億円）、6月は0.23億マカオパタカ（約3.0億円）、7月及び8月はいずれも0.43億マカオパタカ（約5.6億円）、9月は0.74億マカオパタカ（約9.6億円）、10月は2.35億マカオパタカ（約30.6億円）で推移。

　今年1〜11月累計のカジノ売上は前年同時期から80.5%減の526.23億マカオパタカ（約6861億円）で、マイナス幅は前月終了時点から0.9ポイント縮小。

ゲスト及び従業員のマスク着用やカジノ用品の消毒強化といった防疫対策を講じた上で営業を続けているマカオのカジノ施設（資料）＝2020年3月（写真：GCS）

　DICJは新型コロナ防疫体制下におけるカジノ営業にあたって運営会社に対して従業員及びゲストの健康を最大限保護することなどを求めており、ゲーミング（カジノ）テーブル間の距離の確保、テーブルゲームでは隣席を空ける対応（例えばバカラテーブルでは1テーブルに同時に着席できるのは3〜4人）、スロットマシンについても1台または2台おきの稼動と定められ、交差感染リスク軽減が図られている。チップ等のゲーミング用品に対する消毒も強化実施されている。再開したといっても、あくまで限定的ものだ。

　また、ゲストは入場時にマスクの着用、検温、有効な健康コード（衛生当局の専用サイト上で直近の滞在歴、新型コロナ患者との接触歴の有無、発熱や咳といった症状の有無、連絡先を入力して生成されるQRコード）の提示が義務付けられている。7月15日午前0時からは新型コロナウイルス核酸検査陰性証明書（マカオまたは広東省の認可施設が発出した有効期間内のものに限る）の提示も条件に加わった。

　マカオの月次カジノ売上は2014年6月から2016年7月まで26ヶ月連続で前年割れだったが、2016年8月から2018年12月まで29ヶ月連続で対前年プラスを維持。その後、2019年は1、3、4、7、8、10、11、12月がマイナス、2、5、6、9月がプラスだった。なお、2019年通期のカジノ売上は対前年3.4%減の2924.55億マカオパタカ（約3兆8133億円）。3年ぶりに前年割れとなり、2年ぶりに3000億パタカの大台も下回った。

　カジノを含むマカオのツーリズム産業にとって明るい話題もある。目下、外地からの新型コロナ流入防止を目的とした入境制限を含む水際措置は維持されているが、マカオ及び広東省における状況が落ち着いてきたことを受け、7月15日から両地の間で水際対策が一部緩和（新型コロナウイルス核酸検査の陰性証明書の提示などの条件付きで14日間の隔離検疫を免除）された。また、中国広東省珠海市居民及び広東省居民を対象にしたビザに相当するマカオ渡航許可（個人・団体観光旅行）の発給がそれぞれ8月12日、26日から再開。9月23日から中国本土全域に拡大された。昨年のマカオの総インバウンド旅客数に占める中国本土旅客の割合は約7割で、往来制限緩和に伴う旅客増が期待されている。

【資料1】2020年のマカオの月次カジノ売上の推移（カッコ内は前年比）
・1月：221.26億マカオパタカ＝約2885億円（11.3%減）
・2月：31.04億マカオパタカ＝約405億円（87.8%減）
・3月：52.57億マカオパタカ＝約685億円（79.7%減）
・4月：7.54億マカオパタカ＝約98億円（96.8%減）
・5月：17.64億マカオパタカ＝約230億円（93.2%減）
・6月：7.16億マカオパタカ＝約93億円（97.0%減）
・7月：13.44億マカオパタカ＝約175億円（94.5%減）
・8月：13.30億マカオパタカ＝約173億円（94.5%減）
・9月：22.11億マカオパタカ＝約288億円（90.0%減）
・10月：72.70億マカオパタカ＝約948億円（72.5%減）
・11月：67.48億マカオパタカ＝約880億円（70.5%減）
＞1〜11月累計：526.23億パタカ＝約6861億円（80.5%減）

【資料2】2013年〜2019年のマカオの年間カジノ売上の推移（カッコ内は前年比）
・2013年：3607.49億マカオパタカ＝約4兆7038億円（18.6%増）
・2014年：3515.21億マカオパタカ＝約4兆5840億円（2.6%減）
・2015年：2308.40億マカオパタカ＝約3兆0103億円（34.3%減）
・2016年：2232.10億マカオパタカ＝約2兆9108億円（3.3%減）
・2017年：2657.43億マカオパタカ＝約3兆4654億円（19.1%増）
・2018年：3028.46億マカオパタカ＝約3兆9493億円（14.0%増）
・2019年：2924.55億マカオパタカ＝約3兆8133億円（3.4%減）