マカオ、442日連続で新型コロナ市中感染例ゼロ…広東省で再流行も水際措置強化で流入なし

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が世界各地へ拡大し、終息の兆しが見えない中、国際観光都市マカオでも状況の変化に応じた各種防疫対策が講じられている。

 マカオに隣接する広東省において5月下旬から再流行が出現している状況で、マカオでも矢継ぎ早に水際措置の強化が図られた。

 マカオ政府新型コロナウイルス感染症対策センターは6月14日午後5時(現地時間、以下同)から記者会見を開催。同日までマカオの市中における新型コロナの感染確認は輸入性または輸入関連性事案のみで、市中における感染伝播事案は出現していない。市中感染確認例は無症状感染者を含めて442日連続ゼロとなった。輸入性事案は4日連続ゼロ。

 これまでの累計感染確認者(患者)数は52人で、50人が域外からの輸入性、2人が輸入関連性事案。院内感染、死亡例ともゼロを維持している。

 目下、入院患者数は1人で、すでに51人が治癒し退院済み。コロアン島にある公共衛生臨床センター(新型コロナ指定医療機関)に無症状の患者1人、海外で感染歴があり再陽性が出現した2人、海外の高リスク地域から入境し抗体検査で陽性が確認された7人、広東省で感染確認された患者の密接接触者に指定された4人が治療及び医学観察(隔離検疫)のため収容されている。

 目下、外地からの新型コロナ流入防止を目的とした厳格な入境制限が維持されているが、中国本土でも概ね状況が落ち着いたことを受けて、昨年7月中旬以降、両地間の往来制限が段階的に緩和された。同年9月下旬までに中国全土で訪マカオ許可(観光ビザに相当)の申請・発給が再開され、一部の「中リスク地域」を除き、新型コロナウイルス核酸検査陰性証明取得などの条件を満たせば隔離検疫なしでの往来が可能となっている。中国本土との往来制限緩和後もマカオでは市中感染ゼロを維持できており、各種防疫対策が機能しているといえる。

 中リスク地域の指定は市中感染例の出現状況に応じて随時アップデートされ、マカオ入境前14日内に滞在歴がある場合、マカオ到着後、政府指定場所(ホテル)で14日間の医学観察(強制隔離検疫)を受けることが必須で、さらに隔離検疫満了後も14日間の自己健康管理期間として個人防疫対策を講じることが求められる。

 マカオから近く、往来も盛んな広東省における再流行が続く中、広州市の中心部を含む広い範囲のほか、仏山市と深セン市の一部などが中リスク地域に指定されている。6月8日午前10時からは、広東省とマカオの間を往来するすべての人に対し、48時間以内の新型コロナPCR検査陰性証明の提示を必要とする措置が講じられた。域内における防疫措置も強化されている。

 マカオ政府新型コロナウイルス感染症対策センターによれば、目下、広州で再流行しているウイルスは、インドで最初に見つかった新型コロナウイルス変異株にあたる「デルタ株」で、潜伏期案が短い、伝播スピードは早い、ウイルス量が多いといった特徴があるとのこと。広州における今回の再流行のきっかけとなったのは1人の高齢者で、そこから1週間のうちに3代に伝播し、広州で1800万人規模のPCR検査を実施するに至り、医療資源を集中せざるを得ずワクチン接種が一時ストップしたという。同センターは、デルタ株はマカオで確認された51人目の患者(ネパール滞在歴あり)からも検出され、マカオと広州などは人の往来も多く、このウイルス株を持った人がマカオに入境する可能性も排除できないとし、市民に対して近日相次いで強化された水際措置、域内における防疫措置への協力を求めた。

マカオ政府新型コロナウイルス感染症対策センターによる定例記者会見=2021年6月14日(写真:マカオ政府新型コロナウイルス感染症対策センター)

 マカオでは、2月9日から高リスク群を対象とした新型コロナワクチンの接種がスタートした。その後、同月22日から接種対象が全マカオ居民(マカオ居民IDカード保有者)へ、3月9日からマカオで就労する海外労働者やマカオの学校に通う非居民の学生らへ、4月9日からは海外労働やの家族、領事職員、就労ビザが切れたものの帰国できず滞在している人など上記以外の合法的常住者(過去6ヶ月内の過半をマカオに滞在した上で条件を満たした場合)へも拡大されている。現在、マカオで使われているワクチンは中国医薬集団(シノファーム)製の不活化ワクチン(中国製)と中国の復星医薬が代理となるドイツ・ビオンテック製のmRNAワクチン「Comirnaty」(ドイツ製)の2種。

 14日午後4時までの累計ワクチン接種回数は25万5556回で、接種人数は17万7279人。内訳は、1回目の接種を済ませた人が9万7794人、2回目の接種を済ませた人が7万9485人。

 ワクチン接種後の異常については、累計で1026件報告されており、めまいや微熱など軽微な事案が1023件、重大な事案が3件。

 マカオ政府はシノファーム製、ビオンテック製に加え、英国アストラゼネカのアデノウイルスベクターワクチン(生産地:米国)の計150万本を確保済み。アストラゼネカ製のワクチンについては、現状の接種の進行状況と2種のワクチンの在庫及び供給予定を鑑み、年内の供給を見合わせることを発表済み。

 なお、ワクチン接種はあくまで希望制であり、在庫がある状況下において複数のワクチンの中から自由に選択できるとされている。これまでのところ、シノファーム製が84%とのこと。接種費用はマカオ居民、マカオで就労する海外労働者、マカオの学校に通う学生は無償、その他は1回あたり250マカオパタカ(日本円換算:約3300円)となる。

 マカオ政府が確保したワクチンはいずれも2回接種が必要なものだが、マカオの総人口は約68万人のため、充足しているといえる。

 この日の会見では、マカオ政府がいわゆる接触確認アプリの開発を進めていることも明らかにされた。行動履歴を追跡する機能を持つが、データは利用者のスマートフォンの中に保存されるのみで、政府のデータセンターに送られることはないとし、個人情報保護に配慮したものになるという。

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