香港の日系企業を狙った詐欺未遂事件相次ぐ…領事館が再度注意呼びかけ

 今年(2021年)4月、香港の日系企業を狙った詐欺未遂事件が複数件発生していたとして、在香港日本国総領事館が一斉メール配信を通じて現地在留邦人に対する注意喚起を行った。

 同館によれば、その後も日系企業を狙った詐欺事件が続いており、ここ数ヶ月は増加傾向にあるとし、10月28日に最新事案の具体例紹介を含む一斉メール配信で再度の注意喚起がなされた。

 手口は4月時点のものと同様、日本本社の代表名を名乗りM&Aの交渉のため指定の弁護士と連絡を取るように促すものだが、架電者の日本語が流暢である、日本本社の電話番号が着信番号として表示されるなど、手口がより巧妙になってきているとのこと。これまでのところ、実際の被害が生じたとの情報はないというが、今後も同様の事案が発生するおそれがあるため、注意するよう呼びかけた。また、同様の事案が発生した際には、同館及び本社の担当部署に通知してほしいとした。

 香港の日系企業を狙った詐欺未遂事案の概要(最近の具体例)は以下の通り。(在香港日本国総領事館配信メールの内容より)

【ポイント】
・社長を名乗る人物より電話有り。
・日本本社の電話番号が着信番号として表示されることがある。
・日本語が流暢であるため、電話している人物は日本人と思われる。
・駐在事務所の経理財務責任者が狙われている。
・架電内容は「M&A交渉のため指定の弁護士と連絡をとって、必要額を指定口座に振り込んでほしい」というもの。
・極秘事案のため、本社への確認のための電話・メールは一切止めて欲しいという釘刺しあり。

●9/14 事案1
・本社社長を名乗る人物より電話。
・日本人スタッフがいるかどうか、香港側の代表携帯番号を教えてほしい、経理財務担当者に繋いでほしい等の要求あり。
・現地スタッフが対応したが、社長とも面識のあるスタッフであり、声や話す雰囲気に違和感があったことから、電話をかけてきた人物に詳細情報を確認。確認している最中に電話は切られる。

●9/20 事案2
・本社の社長を名乗る人物から電話。発信元は本社の代表電話。極秘のM&A案件を進めており、至急資金を振り込んでもらいたいとのこと。
・弁護士と社長の2者だけで進めている。秘書にも知らせていないので誰にも知らせるなとの由。送金が完了するまでこの電話を切らないよう指示を受ける。
・日本語が流暢であるため、架電者は日本人であると思われる。
・英国の弁護士から入金口座や金額についてメールが届くので入金してほしいと連絡あり。途中まで手続きを進めたが、弁護士からのメールのドメインと弁護士事務所のHPに記載されているドメインとが異なることに気づく。
・その後本社の秘書に連絡したところ、社長は本日不在で、詐欺であることが発覚。手続きを中止。

●10/5 事案3
・本社代表電話番号から会長を名乗る人物から電話。極秘のM&A案件を進めており、資金を振り込んでもらいたいとのこと。
・経理担当者が対応し、送金権限がある者は誰かと問われ現地法人社長だと答えると、電話を替わるよう言われた。
・声が会長と異なるように思い本人確認したところ切電。
・日本語は流暢でおそらく日本人であると思われる。

●10/15 事案4
・本社代表電話番号からの架電で、本社社長を名乗り、現地法人社長への連絡。
・日本語が流暢であるため、架電者は日本人であると思われる。
・極秘M&A実施のため、現地法人から送金が必要との説明がなされる。
・極秘案件のため、本件に関する連絡手段は、荷電者又は弁護士から現地法人への電話に限定してほしい旨の伝達あり(現地法人から本社へ確認の電話やメールをしないよう釘をさされる。)。
・雑談が一切ないので、違和感を感じる一方、それだけ重要な事案なのかとも想像。架電者からの指示に反するが本社に探りをいれて、本社社長の所在等から詐欺と判明。

●10/21 事案5
・本社の社長を名乗る人物から電話。言葉遣いなどから、架電者は日本人であると思われる。
・極秘のM&A実施のため、現地法人からの送金が必要とのこと。
・送金実施のため、弁護士のメールアドレスを伝えるので、送金先情報が欲しい旨のメールを送信し、折り返し弁護士から送金先情報が送られた後、大至急送金してほしい旨の説明がなされる。
・極秘案件のため、他言厳禁。
・当館からの注意喚起メールを確認していたため、詐欺と判断し、本社社長に確認したところ、送金を依頼した事実はなかった。
・弁護士から送付された送金先情報に記載のあった弁護士事務所や送金先企業名は実在の法人であった。

 なお、類似の事件がメキシコやドイツでも2019年頃に起きているとのこと。

香港の町並み(資料)—本紙撮影

香港の町並み(資料)—本紙撮影

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