人口約730万人の香港では、昨年（2021年）12月末から新型コロナウイルス感染症の流行「第5波」が続く。

　2月から3月にかけて、オミクロン変異株派生型のBA.2（いわゆる「ステルスオミクロン」）による伝播が主となり、市中における新規感染確認数が急増し、医療崩壊に直面するなど深刻な状況となった。3月下旬以降は緩やかな減少が続いたが、長く単日200〜300人程度でこう着状態を維持した後、6月中旬から目立ったリバウンドが出現している。

　香港衛生当局が8月21日夕方の会見で発表した内容によれば、同日午前0時時点集計の単日の新規市中感染確認数は前日から66人増の6276人、輸入性は58人増の237人だった。

　市中と輸入性の合計は前日から124人増の6513人で、4日連続6千人超。市中感染例に限ると3日連続。第5波開始以来の累計感染確認数は約144.6万人。

　新規死亡報告数は3人、年齢は65〜81歳で、いずれも新型コロナワクチン未接種。第5波開始以来の累計死亡者数は9392人に。当局はワクチン未接種者の死亡率は接種者の60倍にも上るとするデータを挙げ、市民に対して速やかに接種を済ませるよう呼びかけた。

　また当局では、このところの感染例に占めるオミクロンBA.5の割合が上昇を維持しており、最新データでは34.2%に達したとした。BA.2.12.2は8.5%。主流株がBA.5へ置き換わりつつある状況が伺える。

　香港では、4月から段階的に水際措置を緩和して以降、輸入性の感染例が連日出現しており、オミクロン変異株派生型の感染者も相次ぎ見つかっている。3月下旬以降に一旦流行状況が安定したことを受けて、4月中旬から5月中旬にかけて学校の対面授業再開、ソーシャルディスタンス措置の緩和（第一段階及び第二段階）が進んだ。

　ただし、5月19日のソーシャルディスタンス措置の第二段階緩和でバーの営業が再開可能となって以降、複数のバーで大規模なクラスターの発生が相次いだほか、隔離検疫ホテルで発生した交差感染をきっかけに市中でのオミクロンBA2.12.1の伝播につながったケースなどもある。こうした状況や6月中旬以降のリバウンドを踏まえ、ソーシャルディスタンス措置の一層の緩和は見合わせが続いており、少なくとも8月24日までは現状維持が決まっている。8月初旬には入境者の隔離検疫期間が3日間まで短縮されており、輸入性感染例の増につながること、隔離検疫期間満了後に発見に至るケースが一定数出現することが予想されていた。なお、香港財政庁の陳茂波長官は21日にラジオ番組へ出演した際、水際措置緩和作としてホテルでの隔離検疫を省略する「0+7（隔離0日＋健康管理期間7日間）」について議論するのは時期尚早との見方を示し、その理由として中国本土との往来正常化とのバランスを取ることの必要性を挙げた。

　8月20日時点の香港の3歳以上の人口におけるワクチン接種率は93.2%（1回目の接種完了）、90.1%（2回目の接種完了）、70.1%（3回目の接種完了）となっている。接種率は昨年後半にかけて伸び悩んでいたが、流行第5波の深刻化を受け、年初にかけて一気に上昇。ただし、一旦状況が落ち着き、こう着状態となって以降は再び頭打ち状態に。20日単日の接種回数（1〜4回目の接種合計）は2万3343回で、7日移動平均は1万9585回。年齢層別の接種率（1回目の接種完了）では、3歳以下（7.01%）、3〜11歳（79.18%）、70〜79歳（82.4%）、80歳以上（70.27%）が大きく平均を下回っており、高齢者に対する訪問接種サービスを展開するなどの接種率向上策が講じられている。

香港のイメージ＝香港島・中環にて本紙撮影