トランジット滞在制度縮小―本土客の裏技入境回避狙う

マカオ当局警察部門の資料によると、昨年約210万人の中国本土旅客が第三国、地域のビザを添付した中国パスポートを利用してマカオに入境したというが、うち8割が実際にはビザ発給国、地域へ渡航せず、マカオ滞在のためだけに利用されたことが大きな関心を集めている。

現状、マカオではマカオを経由して第三国へ渡航するための「トランジット滞在」を認めており、入境時に当該国が発給したビザを添付したパスポート及びフライトのEチケットを提示することでマカオに1週間の滞在ができる。

中国本土籍の旅客がマカオを訪れる際、「自由行」と呼ばれる個人旅行ビザを取得するのが一般的だが、一定期間内の渡航回数に制限が設定されている。しかし、トランジット滞在制度はこの回数制限の影響を受けない「裏技」の入境方法として広く認知され、実際に利用されている。

トランジット制度が本来の目的と違った形で利用されている状況を鑑み、マカオ出入境を管轄するマカオ政府治安警察局で検討を行ってきた。同局は6月16日、今年(2014年)7月1日から制度改正を実施することを発表した。具体的にはトランジット制度を利用したマカオ滞在期間を従来の7日間から2日減の5日間とする。また、第三国、地域へ渡航しなかった場合、60日以内(従来30日)の再入境時の滞在期限は1日とする。また、この場合に60日以内の3度目の入境は認めない。

トランジット制度を利用した滞在期間の短縮措置は2008年に14日間が7日間となって以来、今回が2度目となる。

先月、トランジット制度を利用した滞在期間の短縮について報じられた際、中国本土客への依存度が高いカジノや小売業への影響を懸念する声が多く聞かれた。今回、具体的な措置の内容が明らかになったわけだが、比較的緩やかな制限となったことで、大きな影響はないものと見られる。

地元紙の報道によると、第三国、地域のビザの入手場所として知られる珠海市・拱北イミグレーション近くのショッピングモールでは、当局による偽造ビザ販売店に対する取り締まりが強化されているものの、客引きの姿は依然として多く見られるという。ここで販売されているビザの価格は約200人民元といい、昨年のトランジット制度を使った入境者数210万人で掛け算すると、約4億2千万人民元(68.8億円)の金額が動いたことになる。

珠海・拱北イミグレーション(資料)―本紙撮影

珠海・拱北イミグレーション(資料)―本紙撮影

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