2006年にウィンリゾーツマカオがコタイ地区の新プロジェクト用地の供給をマカオ政府に申請した際、同エリアで事業権益を有するとされる企業に5千万米ドルを支払ったとし、ウィンマカオ親会社の株主という米国の組合代表がマカオ行政長官及び土地工務運輸司司長宛にこの件に関する調査及び関連資料の公開を求めた。
7月9日付の香港の有力紙「東方日報」などが報じ、地元マカオメディアも追随した。東方日報によると、ウィンリゾーツマカオがコタイ地区の新プロジェクト用地の供給をマカオ政府に申請した際、同エリアで中国本土と台湾の関係改善を図るための施設として台湾会館の建設を計画しているという天驕娛樂投資有限公司(以下、天驕社)に対し5千万米ドルを支払い、同社の持つ権益を買い取った。その後、マカオ政府が21エーカーの用地を15億4千万ドルの土地使用権代価で獲得している。同区画ではウィンパレスの建設工事が2013年に着工済み。
ウィンマカオCEOのスティーブ・ウィン氏は2012年にメディアの取材に回答した際、コタイ地区に進出するためにやむを得ない出費だったことを認めている。また、政府から天驕社と土地権益の件で話し合いを行うよう提案されたという。ウィン社は2008年に天驕社との間で協議書を締結し、天驕社のコタイ地区の事業権益の破棄に対して5千万米ドルを支払ったという。
天驕社は2005年にマカオで設立された企業だが、その実態は明らかになっていない。2名の個人株主がおり、それぞれ香港と北京に住所があるという。しかし、東方日報が香港の住所を訪れたところ、会計士事務所だった。また、マカオの登記住所は旅行社となっていた。
マカオ政府土地工務運輸局は報道のあった7月9日の夜になってコメントを発表。政府とウィンリゾーツマカオ社の間の土地供給契約は2012年第18期第二組「マカオ特別行政区公報」に掲載されている通りだとし、この土地供給に関する文書の中に天驕社に関する資料は一切ないとしている。
今回、コタイ地区の土地供給における黒幕の存在疑惑が明るみに出た。そもそも、天驕社がコタイ地区に持つ事業権益とは何だったのか、天驕社はどのようにして政府から権益を獲得したのか、ウィン社はなぜ天驕社に多額の支払いを行う必要があったか、コタイ地区でプロジェクトを進める他のカジノ企業でも同じようなことが起こっていたのか、天驕社の背後関係はどうあっているのかなど、多くの疑問が残る。
この件に関して米国政府が反海外汚職法で調査を進めるという報道もあることから、今後しばらく進展に注目が集まりそうだ。