マカオのカジノ全面禁煙化案、経済への影響有無で賛否分かれる
- 2015/6/8 10:42
- カジノ・IR
マカオのカジノ売上が昨年(2014年)6月から今年5月まで12ヶ月連続で前年割れとなる中、マカオ政府社会文化庁のアレクシス・タム(譚俊栄)長官は5月12日、政府としてカジノフロアの完全禁煙化を検討していることを明らかにした。現在、マカオのカジノでは、VIPルームが分煙、マスゲーミングフロア(平場)は禁煙だが、フロア内に喫煙ルームが設置されている。
タム長官によると、政府の目指す全面禁煙化とは、VIPルームを禁煙化し、喫煙ルームの設置も認めないとするもの。
マカオの政府系放送局TDMが6月7日、カジノ全面禁煙化及び喫煙ルームの設置継続の是非をテーマにした公開討論番組を生中継で放送。パネリスト、観覧者の間で、マカオ経済全体に与えるマイナス影響の有無について、大きく意見が分かれる結果となった。
パネリストとして登壇したVIPルーム業者らで構成されるマカオゲーミング仲介人協会の郭志忠会長は、マカオ全体のカジノ売上に占めるVIPルームの割合は56%と大きく、顧客は喫煙者が多いことから、全面禁煙化は災難ともいえる大きなインパクトを与え、マカオ全体の経済にもマイナス影響を及ぼしかねないと指摘。同協会は、カジノフロアの禁煙化には理解を示すものの、喫煙ルームの設置継続を求めている。
一方、マカオゲーミング企業従業員協会の蔡錦富総幹事は、目下、VIPルームは喫煙可能であるにもかかわらず、VIPカジノ売上の下落や一部VIPルームの閉鎖などが見受けられることから、禁煙のみが経営に影響を与える要因とは言い難いとした。
また、マカオ政府衛生局たばこ規制局の鄧志豪主任は、喫煙ルームを設置した場合、カジノフロアから完全にたばこの煙を除去することはできないとするWHO(世界保健機関)等の研究結果を紹介。
レスポンシブルゲーミング(責任あるゲーミング)協会の宋偉傑理事長は、マカオ経済のカジノ依存度は極めて高く、カジノ完全禁煙化案の是非を巡る意見対立につながっているとし、マカオ政府に対して産業の多角化を速やかに推進するよう求めるとした。
マカオにとって、カジノは屋台骨ともいえる産業となっている。マカオ政府の歳入に占めるカジノ税収の割合は昨年実績で約8割、仲介人(=いわゆる「ジャンケット」)及び仲介人パートナーを含むマカオのカジノ業従事者数はおよそ8万人程度いるとみられ、マカオの人口64万人の8分の1、就業人口40万人の5分の1を占める。