日本でも地域振興の起爆剤としてIR(統合型リゾート)の導入が議論されているが、マカオでは2005年頃から大型IRの開幕が相次ぎ、今年から2017年にかけてピークを迎える。
マカオで最も直近にお目見えする新IRは、メルコ・クラウン・エンターテインメント(以下、MCE)が開発を進める大型プロジェクト、スタジオ・シティだ。10月27日の開幕を予定している。同社はこれまで、日本のカジノ解禁が実現した場合に日本市場への進出を計画していると公言していることから、日本からの注目度も高い。
スタジオ・シティはハリウッド映画をテーマとした大型IR施設で、カジノ、ホテル、ショッピングモール、多目的アリーナのほか、世界初の8の字型観覧車「ゴールデン・リール」、バットマンをテーマにしたアトラクション「バットマン・ダーク・フライト」、世界的イリュージョニストとして知られるフランツ・ハラレー氏プロデュースの常設型マジックアトラクション「ザ・ハウス・オブ・マジック」など、ファミリー向けレジャー・エンターテイメント要素を多数盛り込んでいるのが特徴的だ。
MCEは10月19日、スタジオ・シティの開幕を目前に控え、具体的な従業員の数を初めて明らかにした。今年1月の概要説明会では8000人規模としていたが、今回の発表では8500人超に膨らんだ。なお、10月27日のオープニング時では5000人とのこと。
1つの新IRのオープンで8500人の雇用創出効果があるといっても、なかなかピンとこないかもしれない。例えば、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンのクルー数は6580人(いずれも2014年3月31日現在)だ。マカオの人口は約64万人、このうち労働人口は約40万人であることを考えると、その数字上のインパクトは非常に大きいといえる。
マカオでは、スタジオ・シティだけでなく、これから2017年頃まで大型IRの開幕が相次ぎ、パリジャンマカオが約2万人、ウィンパレスが9000〜1万人、MGMコタイが8000人、リスボアパレスが8000人の雇用をそれぞれ計画しているとされる。
一方、雇用創出といえば、プラスで捉えられるイメージだが、マカオのような小さい経済体における急速な労働変化は様々な課題も浮かび上がっている。より給与水準が高く、福利厚生の充実したIRへの人材流出が続き、地元中小企業が人材難に苦しんでいるほか、数を追求することによるサービス水準の低下、地元マカオ人と海外から受け入れる労働者の数の不均衡化といった点も指摘されている。