香港当局、路面電車の一部区間廃止案を否決=地下鉄とルート重複も存在価値認める

香港のシンボルのひとつとして市民や観光客に親しまれているのが、世界的にも珍しい2階建ての路面電車(トラム)だ。今年(2015年)8月、かつて香港政府の都市計画プランナーを務めた薛國強(シ・クォッケン)氏が一部区間を廃止すべきとする申請を政府都市計画委員会に提出したと報じられ、多くの市民の間から反対の声が上がっていた。

香港トラムは香港島北部の東西(東端:シャウケイワン/西端:ケネディタウン)を結ぶ本線部分と途中から分岐して競馬場のあるハッピーバレーへ至る支線の計16.2キロメートル、123駅から成る。開業年は1904年で、1世紀以上の長い歴史を持つ。

しかし、昨年12月28日、同じく香港島北部を東西(東端:チャイワン/西端:ションワン)に結ぶ地下鉄アイランド線の西方延伸部、ションワン〜ケネディタウン間が開通したことを受け、香港トラム本線の全区間が地下鉄アイランド線と重複する結果となった。

地元紙の報道によると、薛氏は申請の中で、並行地下鉄路線が存在すること、スピードが遅いことなどを挙げ、交通渋滞の激しいセントラル地区周辺のトラムの廃止により問題が改善されると説明したという。

その後、都市計画委員会は10月23日、薛氏の申請を否決したことを発表。政府運輸署がトラムの旅客輸送量はのべ1日18万人に達し、一部区間の廃止により5.6万人がタクシーやバスへのシフトを余儀なくされ、交通渋滞が一層悪化すると指摘したことなどをその理由として挙げ、薛氏の申請内容は理論的裏付けに乏しいと一蹴した。

香港トラムを運営会社は、都市計画委員会の決定を受け、トラムは運賃が安く経済的(均一2.3香港ドル=約36円)、便利で環境にも優しい交通機関であり、毎日平均20万人に利用いただいているとし、今後も車輌の更新などサービス改善に努めるとのコメントを発表している。

香港トラムといえば、カラフルな広告ラッピング車輌もアイコニックな存在だ。広告部門など運賃以外の売上も好調で、経営は黒字という。

記者もかつて香港に駐在していた経験があり、移動時にトラムを愛用していた。地下鉄アイランド線は比較的地下深い場所にホームがあり、上下移動だけでもかなりの時間を要する。トラムはスピードこそ遅いが、停留所の数や運行頻度も多く、地下鉄で1〜3駅分の短い距離を移動する場合の利便性は高い。

ノースポイント地区のマーケット街を走る香港トラム(資料)—本紙撮影

ノースポイント地区のマーケット街を走る香港トラム(資料)—本紙撮影


カラフルな広告ラッピングトラムも香港名物のひとつ(資料)—本紙撮影

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