マカオの新IRリスボアパレス、VIPルーム設置計画なし=カジノのマスシフト進む
- 2015/11/8 11:16
- カジノ・IR
2002年のカジノ経営ライセンスの対外開放以降、長年にわたって右肩上がりの成長を遂げてきたマカオのカジノ売上だが、昨年大きな転機が訪れた。月次カジノ売上が昨年6月から今年10月まで17ヶ月連続で前年割れを記録するなど、出口の見えない長いトンネルの中を進んでいる状態だ。
マカオのカジノ売上減の背景として、昨今の中国経済のスローダウン、反汚職キャンペーン、人民元の切り下げ(マカオ及び香港の通貨、パタカと香港ドルの為替はいずれも米ドルと連動)などを理由に、中国本土富裕層を中心としたハイローラーと呼ばれるVIPカジノ客のマカオ渡航意欲が減退していることが指摘されている。一方、訪マカオ旅客数そのものは前年と大きく変わっておらず、平場にあたるマスゲーミング部門の売上は比較的安定的に推移している。こういった状況の中、カジノ6陣営の中では、VIPルームのゲーミングテーブルをマスゲーミングフロア(平場)に移すなど、マスシフトの動きが見受けられる。
マカオでカジノ経営ライセンスを保有する6陣営の一角、SJMホールディングスのアンジェラ・リョン業務執行取締役は11月8日に地元メディアの取材に応じた際、同社がマカオ・コタイ地区で2017年オープンに向け開発を進める新IR(統合型リゾート)「リスボアパレス」について、現時点でVIPルームの設置計画がないことを明らかにした。リョン氏によると、リスボアパレスの敷地面積は約7万平米とコタイ地区における6陣営のIRの中では最も小さいとした上、カジノフロアは全体の1割に過ぎず、9割がノンゲーミング(非カジノ)用途になるとのこと。
SJMホールディングスは、かつてマカオのカジノ経営権を独占していたSTDMが前身で、マカオ半島に旗艦施設「グランドリスボア」と「リスボア」を構えるほか、直営及びフランチャイズ形式で中小カジノ施設を複数展開している。現在、同社はマカオのカジノ6陣営の中で唯一本格的なIRを持たず、カジノ売上への依存度が極めて高いとされる。同社は2014年までマカオの企業別カジノ売上シェアでトップの座を守り続けているが、昨今のマカオ全体のカジノ売上の低迷を受け、月次のシェア争いで大型IRを展開するサンズチャイナやギャラクシーエンターテイメントに抜かれることもしばしば見受けられるようになった。
なお、VIPルームなしで新IRをオープンする例はリスボアパレスが初めてではない。今年10月27日にマカオ・コタイ地区に開幕したメルコ・クラウン・エンターテインメントの大型IR「スタジオ・シティ」は、事前に政府から割り当てを受けた250台の新規ゲーミングテーブルをすべてマスに配置し、マカオのIRとして初めてVIPルームを設置しない施設となり大きな注目を浴びた。