マカオカジノ(ゲーミング)産業発展史

カジノ専営制度(独占営業権)

1963年頃に撮影された現在建物外観のみが残る塔石広場前にある愛都酒店内にあった新花園(エストリル)カジノ内観(出典:Macau Antigo)

泰興公司によるカジノ独占営業権が1961年12月31日をもって満了することを受け、マルケス総督は同年7月に新法を公布、合法化された「幸運博彩」方式によるゲーミング業の独占経営権を公開入札方式で決定することとした。葉漢氏、葉得利氏、何鴻燊(スタンレー・ホー)氏及び霍英東氏らの香港・マカオ商人による新会社と元ライセンス保有企業である泰興公司の2陣営が入札。結果、新会社側がゲーミング業及び現在の宝くじ、ロトにあたる富くじの独占経営権を獲得することとなった。同年8月、インドネシア華僑の鄭君豹氏がドッグレースの復活を政府に申請し、政府は8年間のドッグレース独占経営権を新たに組織された「マカオ・カニドローム(逸園賽狗公司)」へ与え、1963年8月に正式開業した。

開業後間もない1972年に撮影されたホテルリスボア(出典:Macau Antigo)

葉漢氏、葉得利氏、何鴻燊氏、霍英東氏らによる新独占会社は1962年に「澳門旅遊娯楽有限公司(澳門旅遊娛樂有限公司)」(略称「澳娯」)の名で登記を完了。同年、「澳娯」による最初のゲーミング施設として「新花園カジノ」をオープンし、以後40年の長期に渡り「幸運博彩」方式によるゲーミングの独占事業を展開する。その後、1970年に旗艦施設となる「ホテルリスボア」、「リスボアカジノ」が開業。開業以来1982年までに「澳娯」は法律の下、ファンタン、バカラ、クラップス、シックボー(大小)、ブラックジャック、スロットマシンなど10種を超えるゲームを次々と導入した。

1970年代の新馬路(出典:澳門歷史檔案館「回望新馬路」)

1980年、葉漢氏が「澳門賽馬車會」を設立し、馬車レースを導入するものの、残念ながら好評を得られず、賭け金が伸び悩む中で1988年に事業を終了。同年、「澳門賽馬車會」は「台灣朕偉投資開發股份有限公司」により買収され、レースコースを競馬場とした上で1989年に最初のレースが開催された。しかし、競馬場として再出発するも、度重なる不利な状況に見舞われ、開業一年で財政危機となってしまう。結局、「澳娯」が10億パタカの資金を集めて「澳門賽馬車會」を買収することで事業を継続、1991年2月にレースが復活した。

1998年、「澳娯」が日本のパチンコを導入。同年、ワールドカップ開幕に間に合うよう「澳門彩票有限公司」がサッカーくじ販売ライセンスを政府から獲得。「澳娯」は積極的に事業範囲を拡大させ、マカオゲーミング界最大のプレーヤーとなる。

次のページ:
1 2

3

4 5

関連記事

最近の記事

  1.  マカオを中心にアジア、欧州で統合型リゾート(IR)施設の開発・所有・運営を行うメルコリゾーツ&エ…
  2.  マカオの新交通システム「マカオLRT(Light Rapid Transit)」を運営する澳門輕…
  3.  マカオ政府統計調査局は11月20日、今年(2024年)1〜9月の小売業販売額調査結果を公表。 …
  4.  マカオ政府統計・センサス局は11月20日、今年第3四半期(2024年7〜9月)の金融業人材需給及…
  5.  マカオ政府公共建設局(DSOP)の発表によれば、コタイ地区の南東部に位置する約9万4000平米の…

ピックアップ記事

  1.  マカオの新交通システム「マカオLRT(Light Rapid Transit)」を運営するマカオ…
  2.  マカオで統合型リゾート(IR)を運営するサンズチャイナと米国のホテル大手マリオットインターナショ…
  3.  マカオ政府は6月17日、政府がコタイ地区の南東部に位置する約9万4000平米の国有地を活用し、約…
  4.  マカオのマカオ半島側とタイパ島を結ぶ4番目の跨海大橋となる「マカオ大橋(澳門大橋/Ponte M…
  5.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…

注目記事

  1.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  2.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  3.  マカオ治安警察局は3月5日、東京などからマカオへ向かう航空機内で窃盗を繰り返したとして中国人(中…
  4.  日本も出場した女子バレーボールネーションズリーグ(VNL)予選第2週のマカオ大会が5月28日から…
  5.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年11月号
(vol.137)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun