日本展開進める中国発配車アプリ「DiDi」がIJCJI2019マカオに出展…タイガー・チー副社長がビジョン語る
- 2019/8/16 17:19
- 香港・大湾区
スマートフォン向けのライドシェアアプリを展開する中国のIT大手「滴滴出行(ディディチューシン、以下DiDi)は北京に本社を置く2012年に設立されたばかりのベンチャー企業だ。2018年時点で世界1000都市に進出し、ユーザー数は5億5000万人、年間配信回数は100億回にも上るという。
日本についても、2018年6月にソフトバンクとの合弁でDiDiモビリティジャパンを設立。大阪を皮切りに、東京、京都、兵庫、北海道、福岡、広島、青森、名古屋と相次いでサービスエリアを拡大してきた。インパクトのあるテレビコマーシャルや、タクシーに貼られたロゴマークに見覚えがある方も多いだろう。
同社のコアコンピタンスは、ビッグデータとAI(人工知能)を活用した高度な分析・予測テクノロジー。配車プラットフォームとして、タクシー利用者の「乗りたい」とタクシー事業者の「乗せたい」の最適なマッチングを実現している。
DiDiはマカオで8月10日から16日まで「国際人工知能会議(IJCJI)2019」にブース出展したほか、タイガー・チー(Tiger Qie)副社長兼ライドシェアリングビジネスグループ最高技術責任者が講演を行った。本紙では、15日午後に会場内でチー氏にインタビュー取材を実施。日本進出、強み、ビジョンなどについて話を聞いた。
-日本市場の魅力と日本でサービスエリアを急拡大できた理由は?
「日本のタクシー市場はGMV(総流通総額)で年間約133億米ドル(日本円換算:約1兆4118億円)と世界で3番目の規模、かつ運転手のサービスも高品質であり、大きなポテンシャルがある。一方で、タクシーの平均実働率は40%程度であることから、DiDiの中国市場でのオペレーションと経験を活用することで最適化を図り、乗客の待ち時間短縮と運転手の収入増を実現できるチャンスがあると感じた。日本でのサービス開始から約1年の間に、エリアを全国規模に拡大できた理由として、ソフトバンクというパートナーが存在したことが大きい。タクシー事業者との提携がスムーズに進んだ。また、中国のやり方をそのまま日本に持ち込むのではなく、日本市場独特の事情に合わせたローカライズにも取り組んでいる。」
-なぜDiDiは世界の投資家を魅了するのか?
「トランスポーテーション(移動手段)にイノベーションを起こすという我々のビジョンが共感を得られているからだと思う。現在、日本ではタクシー配車アプリが中心ですが、世界では幅広いジャンルのライドシェアサービスを展開。日本のトヨタ自動車など世界の自動車メーカーとの協業で、クルマそのものを進化させる取り組みも進めており、モビリティインフラのインテリジェントコネクション構築を目指している。将来、個人がクルマを所有しなくても、待たずに移動できるという、より便利な社会を実現したい。」
-日本では高齢化が進んでいる。世代による情報格差対策は?
「日本のタクシードライバーの平均年齢は中国と比較して高く、高齢ドライバーの中にはデジタルデバイス操作が苦手という方も多い。また、日本のタクシードライバーは真っ白な手袋をして運転するが、そのままではデバイスのタッチパネルが反応せず、操作の度に手袋を外すのも現実的ではない。これに対応するため、ボイスコントロールシステムを導入することで解決を図った。ドライバーの健康状態のチェックを行うシステムも用意している。2018年の日本におけるユーザーは20〜30代が約半数だった。我々は、高齢者だけでなく、妊娠中の女性、ハンディキャップを持つ方など、あらゆるユーザーのニーズに合ったサービスの提供を目指している。24時間355日受け付けを行う有人対応のカスタマーサービスホットラインを設けているのもその一環だ。DiDiの配車アプリはAIによる自動翻訳機能を搭載し、日本語を含む多言語対応を実現している。例えば、中国からの訪日観光客が日本でタクシーを利用する際にも、日本人ドライバーとスムーズにメッセージのやり取りができる。」
現在、日本版のDiDiアプリは日本国内のサービスエリアとオーストラリア、メキシコで利用することができるが、商用や観光で訪れることの多い中国本土や香港で利用するにはGreater China版のアプリを別途インストールする必要があり、中国語もしくは英語対応となっており。この点については、改善を期待したい。一方、中国の滴滴出行ユーザーは、中国版アプリを使って日本でタクシーを呼び出すことができ、かつアプリ内に即時日中翻訳付きのインスタントメッセージ機能を内蔵しており、Alipay、WeChat Payを含む中国のオンライン決済機能が日本でもそのまま利用できることで、使い勝手が中国人観光客に高く評価されている。なお、マカオはサービス圏外となっているが、中国本土からのインバウンド旅客が多い観光であり、重要市場として捉えているとのこと。