マカオのサンシティグループが計画する和歌山IRで地元へどんなポジティブインパクトが期待されるのか?
- 2021/3/15 16:35
- 澳日関係
日本版IR(統合型リゾート)をめぐっては、大都市から地方まで、全国で複数の自治体が立候補する方針を示しており、各候補地で開発と運営を担う事業者(オペレーター)については国内外の事業者が参入に名乗りを上げている。マカオからも、総合エンターテインメント企業のサンシティグループが和歌山への進出を目指している。
これまで、本紙ではサンシティグループがどのような企業なのか、数ある候補地の中からなぜ和歌山を選んだのか、具体的にどのようなIR施設の開発を計画しているのかについてレポートしてきた。現在、日本にはIRはまだ存在しないため、そもそもIRとは何かのイメージがつかみにくいという方も多いはずだ。サンシティグループが和歌山で計画しているIRプロジェクトについて、より身近な地域経済や社会へどのようなポジティブインパクトが期待されるか、和歌山県民のみならずとも気になるところだろう。マカオ拠点の本紙記者がサンシティグループのマカオ本社で取材した内容を元にご紹介していきたい。
ポイントになるのが、サンシティグループが計画しているIRが、これまでになかった「IR2.0」というコンセプトを掲げていることだろう。同社によれば、「オペレーターが持ち込みたいものではなく、より地域の文化に根ざしたものであるべき」との考え方がベースにあり、和歌山の既存の自然環境、歴史、文化を尊重し、地域社会との調和のとれた発展を図ることで、IR施設の中だけではなく、和歌山全体が活力に満ち溢れた社会になることを目指しているとのこと。
これによって、どのようなメリットを地域住民や地元企業にもたらそうとしているのか。同社では、まず和歌山固有の要素を含めた日本の文化をIRの中にふんだんに取り入れるとともに、日本側のパートナーと協力して国際会議や展示会、伝統文化に関する活動など、様々なイベントを誘致することを挙げた。IRを拠点に文化の育成と発信、そして人と物、情報の交流を図ることで賑わいを創出する地域活性化策といえよう。加えて、品質が良く、伝統に裏打ちされた高い品質の和歌山県産品をはじめとする日本製品の積極的な地元企業からの調達を挙げた。IRのスケールやコンセプトを考慮すれば、調達量はもちろんのこと、国内外へのアピールにも期待できるのではないだろうか。
また、地域貢献についても非常に重視しているという。同社はマカオを拠点に世界各地で事業を展開しているが、「地域社会の発展が国の成長につながる」という考えから、場所がどこであろうと社会的責任を果たし、地域社会と連携した社会福祉や慈善活動への参加もしており、和歌山でも同様とした。さらに、国や和歌山県と協力し、地元や周辺地域の発展計画への参加にも参加し、推進していきたいとのこと。地域が活性化すれば、雇用や人材育成といった点についてもポジティブな影響が及ぶことは容易に想像できる。
同社が指す地域貢献の範囲は幅広く、文化やスポーツ振興も含むものとなっている。マカオを代表するモータースポーツの祭典、マカオグランプリで2019年まで6年連続冠スポンサーを務めたのをはじめ、マカオ国際映画祭、ミスマカオコンテストといった幅広いジャンルの大型国際イベントの冠スポンサーや協賛、共催者となり、地域文化を広く発信することで、マカオの国際的なイメージの構築を支援してきた。実は、和歌山県はIR事業構想の中で「スポーツ&ウェルネス」を掲げており、同社も候補地である和歌山市のマリーナシティを最大限に生かした「ヨット・セーリングの聖地・和歌山」の実現を通じた地域活性化を目指す取り組みを進めている。2020年10月にはJapan SailGP Teamとユースアカデミー・オフィシャルパートナー契約を締結し、和歌山セーリングセンター(マリーナシティ)での若手育成強化アカデミー及び海洋保護レクチャー会に協賛。SailGPとは、海のF1とも称される世界最高峰のセーリングの国別対抗戦だ。先月(2月)23日にはSailGP日本チームを招いたトークセッション「ヨットの聖地・和歌山による持続可能な観光産業づくりとは」を開催したばかり。ほかにも、和歌山のスポーツ活動を応援する「WAKAYAMA ACTIVATION PROGRAM」を立ち上げ、その第一弾として和歌山市が本拠地拠のバスケットボールクラブ「和歌山トライアンズ」とオフィシャルスポンサー契約を締結している。
目下、各候補自治体がパートナーの選定に向けた準備を進めている。和歌山県では、2020年3月30日に事業者募集要項を公表し、公募を開始。公募における資格審査にサンシティグループを含む2社が書類を提出し、いずれも審査を通過した。その後、2社とも提案審査書類を提出しており、審査結果(優先権者の選定)が春頃をめどに発表予定とされているため、まもなく大きな動きがありそうだ。