マカオLRTタイパ線が長期運休へ…高圧ケーブル全交換工事のため、工期は180日間程度想定

 マカオ初となる本格的な軌道系大量輸送機関(鉄道)として、2019年12月にマカオLRT(Light Rapid Transit)タイパ線が開業した。

 タイパ線はマカオLRT第1期プロジェクトの一部で、タイパフェリーターミナル駅と海洋駅の間の9.3キロメートル、11駅の区間で営業運転を行っている。沿線には陸海空の玄関口のほか、大型カジノIR(統合型リゾート)が密集するコタイ地区、著名観光地のタイパヴィレッジ、高層マンションが建ち並ぶ新興住宅街が存在する。

 開業からまもなく丸二年を迎える中だが、コロナ禍インバウンド旅客減などの要因により利用者数は低迷し、1日あたりの利用客数が事前見通しの2万人を大きく下回る2000人程度という状況が続いている中、まもなく長期運休に入る見通しであることがわかった。

 マカオ政府は10月15日にコタイ地区にある車両基地で記者会見を開き、マカオLRTタイパ線の全線で高圧電線の交換工事を実施すると発表。交換対象となる高圧ケーブルは22キロボルト、総延長は約124キロメートルで、10月20日から工事に着手し、工期は180日以内を目標として掲げた。また、工事期間中は全線で運休することも明らかにした。ただし、各駅にあるカスタマーサービスセンター、遺失物受取所等の対外サービスは維持され、一部のスタッフはトレーニング課程に参加するという。

 高圧ケーブルの交換に至る理由については、開業以来、故障が相次いで発生したことを受け、システム供給元と監督部門による調査、第三者機関による検査と原因分析を通じて、その原因が列車に電気を供給するケーブルにあり、遮断を引き起こしていたことよることがわかったためとした。夜闇工事も検討されたが、利用客数が低迷する状況もあり、早期の完工を目指して運休を伴う工事実施を選択したという。なお、費用については、システム供給元が負担するとのこと。

 マカオLRT第1期プロジェクトは、国際入札を経て日本の三菱重工と伊藤忠商事の共同体が駅舎と土木工事を除くLRTシステム一式を46億8800万パタカ(日本円換算:約668億円)で受注しており、マカオの公共工事として日本企業が獲得した最大規模の案件としても注目された。三菱重工グループの三菱重工エンジニアリング社の全自動無人運転車両システム(Automated Guideway Transit=AGT)を採用。同社がAGTシステムとして、東京の「ゆりかもめ」と同タイプのクリスタルムーバー型AGT車両、信号・列車制御設備、供電設備、通信システム、軌道、メンテナンス設備、ホームドア、料金機械を手掛ける。また、開業後5年間にわたる車両のオーバーホールメンテナンスも担当し、マカオLRTの安定運行をサポートすることになっている。

 マカオLRT第1期プロジェクトの未開業部分のうち、マカオ半島線(媽閣から西灣湖、南灣湖、新口岸地区、マカオ半島北東部の住宅街を経由して關閘を結ぶ路線)はルート選定が難航するなどしており、本格着工に至っていない状況。目下、タイパ線のマカオ半島側への乗り入れ(タイパ線の海洋駅から西灣大橋を経由して媽閣駅に至る部分)に向けた準備が進むほか、タイパ島北東部にあるマカオ国際空港からマカオ半島東部沖に造成中の埋立地を経由してマカオ半島北端にある關閘を結ぶ全長約9キロの新線計画(東線)についても全線地下を走る地下鉄に類する方式で検討が進んでいる。タイパ線の蓮花口岸駅と横琴新口岸前の新駅を結ぶ支線(2駅、約2.2キロ)と蓮花口岸駅付近から分岐する石排灣支線(2駅、約1.6キロ)は今年に入って以降にそれぞれ着工済み。

マカオLRTタイパ線(資料)=2019年12月10日本紙撮影

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