人口約740万人の香港では、昨年（2021年）12月末から新型コロナウイルス感染症の流行「第5波」が始まった。

　第5波のきっかけとして、隔離施設での検疫が免除されていたキャセイパシフィック航空のクルーが検疫規則に違反して外食に出かけた「望月樓」レストランに居合わせた人たち（オミクロン変異株）、市中に戻った後に隔離検疫ホテル滞在中の交差感染が発覚した女性（オミクロン変異株）、複数店舗で販売されていたオランダから輸入のハムスター（デルタ変異株）の3つが認知されており、これらが入り混じって複雑化の様相を呈している。2月に入って以降、市中における新規感染確認数が急増し、医療システムのキャパシティが限界に達するなど、状況が深刻化している。

　香港衛生当局の発表によれば、2月28日午前0時時点集計の単日の新規感染確認は前日から8440人増（32.4%増）の3万4466人だったとのこと。単日3万人超となるのは初めてで、流行開始以来最多を6日連続更新した。内訳は市中が3万4462人、輸入性（海外からの入境者）が4人。近日、オミクロン変異株亜種BA.2（いわゆる「ステルスオミクロン」）の伝播が主とされている。

　公立病院における28日未明時点の直近24時間の感染者の死亡者数は87人で、うち67人がワクチン未接種だったとのこと。第5波開始以来の累計は636人に。

　第5波下、高齢者または障がい者施設に関連する感染例が多く確認されており、これまでに感染例が出現した施設は580軒、感染者数は職員が約860人、入所者が約2900人に上っているとのこと。

香港のイメージ＝香港島・中環にて本紙撮影

　2月に入って以降の感染急拡大を受け、検査体制の逼迫、公立病院の隔離病床の不足が深刻化している状況で、感染確認または陽性となった人が自宅での待機を余儀なくされているケースも多い。目下、政府がホテルの借り上げや中国中央政府の支援も得て仮設の大規模隔離・治療施設の建設を進めているほか、各種防疫措置の強化、全市民を対象とした強制PCR検査の実施なども発表済み。28日には青衣地区に隔離病床3800台を擁する仮設病院の引き渡しが完了したとのこと。

　香港の2月27日午後8時時点のワクチン接種率は88.7%（1回目の接種完了）、77.0%（2回目の接種完了）となっている（※新たに接種対象となった3〜11歳は含まず）。接種率は昨年後半にかけて伸び悩んでいたが、市中感染確認例が相次ぎ出現したこと、ワクチンパス（所定施設入場時にワクチン接種証明の提示を要する措置）の導入計画発表などを受けて、年初から一気に上昇。27日単日の接種回数は5万9846回で、高位を維持。政府は免疫の壁を構築するための目標として接種率9割の達成を掲げており、ワクチンパスが24日から本格スタートした。

　香港で新型コロナワクチン接種プログラムがスタートしたのは、昨年2月26日のことで、丸1年が経過した。接種率50%を達成したのは8月5日で、70%が11月23日、80%が今年2月6日。数日以内に90%が達成される見通し。