香港の新型コロナ新規感染者数は672人…近日増加傾向、人流増で蔓延か=6/10

 人口約740万人の香港では、昨年(2021年)12月末から新型コロナウイルス感染症の流行「第5波」が続く。

 2月から3月にかけて、オミクロン変異株亜種BA.2(いわゆる「ステルスオミクロン」)による伝播が主となり、市中における新規感染確認数が急増し、医療崩壊に直面するなど深刻な状況となった。3月下旬以降は緩やかな減少が続いたが、長く単日200〜300人程度でこう着状態を維持した後、近日は再び増加に転じている。

 香港衛生当局が6月10日夕方の会見で発表した内容によれば、同日午前0時時点集計の単日の新規感染確認数は前日から2人増の672人(輸入性59人含む)とのこと。内訳はPC検査経由が291人、迅速抗原検査経由(反復検査で陽性が確定したもの)が381人。10日連続で200〜300人水準を上回る状況。第5波開始以来の累計感染者数は約120.5万人。新規の死亡報告数はゼロで、第5波開始以来の累計死亡者数は9177人。

 香港では、4月から段階的に水際措置を緩和したため、このところ輸入性の感染例が連日出現し、人数は30人前後。オミクロン変異株亜種(BA.4、BA2.12.1など)の感染者も相次ぎ見つかっている。また、3月下旬以降に流行状況が安定したことを受けて、4月中旬から5月中旬にかけて学校の対面授業再開、ソーシャルディスタンス措置の緩和(第一段階及び第二段階)が段階的に進んだ。

 ただし、ソーシャルディスタンス措置の緩和以降、レストランやバーでクラスターの発生が相次ぎ、関連感染者数が数十人規模に達した例のほか、隔離検疫ホテルで発生した交差感染から市中でのオミクロン変異株亜種(BA2.12.1)の伝播につながったケースなどもある。

 10日の学校からの陽性報告数は93校の106人。前日から16人増で、直近5日間は対面授業再開後の平均水準を大きく上回る状況が続く。直近7日間で複数人の陽性報告があった学校は32校に上るが、クラスは分散していたといい、当局は校内クラスターではなく、市中における伝播拡大との関連性を指摘した。

 このほか、10日夕方の会見では、市中で新たにオミクロン変異株亜種のBA2.12.1感染疑いの患者が新たに11人見つかったことも明らかにされた。きっかけは隔離検疫用ホテル内で発生した交差感染による市中への流出で、初期には香港島の一部にとどまっていたものの、以降は九龍及び新界地区の広い範囲で感染者が確認されている。ただし、これに関連する患者はほぼ無症状で、重症化や志望に至るケースはないとのこと。

 ソーシャルディスタンス措置の緩和後、顕著なリバウンドは出現していないが、単日の感染確認数のベースは1、2週間前の200〜300人水準から、近日は600〜700人水準まで増加している状況。局地ロックダウン対象内での強制PCR検査によるスクリーニング、各所における下水検査、香港大学の有効再生産数データなどでも同様の傾向が伺えるという。当局では、感染確認数の増加要因として人流増を挙げ、市中において一定程度蔓延している状況との見方を示した。

 6月9日午後8時時点の香港の3歳以上の人口におけるワクチン接種率は92.3%(1回目の接種完了)、87.5%(2回目の接種完了)となっている。接種率は昨年後半にかけて伸び悩んでいたが、流行第5波の深刻化、防疫措置の一環としてワクチンパス(所定施設入場時にワクチン接種証明の提示を要する措置)の導入計画発表などを受けて、年初から一気に上昇。ただし、このところは再び頭打ち状態に。9日単日の接種回数(1〜4回目の接種合計)は1万9313回で、7日移動平均は2万4579回。年齢層別の接種率(1回目の接種完了)では、3〜11歳(74.54%)、70〜79歳(81.24%)、80歳以上(67.97%)が大きく平均を下回っており、高齢者に対する訪問接種サービスを展開するなどの接種率向上策が講じられている。

香港の町並み(資料)—本紙撮影

香港の町並み(資料)—本紙撮影

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