世界カジノ三都物語〜ラスベガス・マカオ・シンガポール〜

シンガポール

 シンガポールといえば、アジアの金融センターとして知られ、マカオやラスベガスと比較するとカジノのイメージが最も薄い都市といえる。マカオやラスベガスが古くからのカジノ都市であったのと異なり、シンガポールでは観光振興による経済活性化を狙い、新たに法整備を行った上でカジノ導入を決定した経緯がある。賛否両論があった上での決断であり、依存症対策といった問題解決のため様々な措置も講じられた。特徴的なのが、当初からカジノ色を弱めたIRを志向したこと、主なターゲットを海外からの旅客とし、地元シンガポール人のカジノフロアへの入場に制限を設けたこと。日本のカジノIRはシンガポール型を参考にするのではないかとも報じられており、一見の価値があるといえる。

マリーナベイサンズ=本紙撮影

 現在、シンガポールにはラスベガス資本ラスベガスサンズグループが手がける「マリーナベイサンズ」とマレーシア資本のゲンティングループが手がける「リゾートワールド」という2つのカジノIRが存在する。オープン時期はいずれも2010年と最近だ。たった2つで世界3位のカジノ都市を牽引しているとあって、それぞれの施設の規模は巨大。前者が金融街に近いウォーターフロントにある印象的なデザインの高層ビル、後者は中心部からやや離れたセントーサ島のテーマパークに位置し、シンガポールの街に上手に溶け込んでいるように感じる。カジノ施設が密集して建ち並ぶマカオやラスベガスとは全く趣が異なる。また、カジノ特有の派手なネオンなどもなく、外観からは猥雑さを全く感じさせない。ただし、カジノフロアに一歩足を踏み入れれば、華やかで熱気あふれるカジノらしい雰囲気が漂っている。マカオのカジノは中国語がメインだが、シンガポールでは英語も通じるようだった。

 実は、今回紹介した3都市の中で、記者が最も日本人観光客の姿を多く見かけたのがシンガポールだった。特にマリーナベイサンズでは日本語の会話が耳に入る機会が多かったように思う。日本でSMAPが出演したソフトバンクのテレビコマーシャルのロケ地として使われ、一気に知名度が向上したことも影響しているのだろう。映像に出てくる絶景の屋上プールは宿泊客専用だが、これを目当てに宿泊する人も多いと聞く。

リゾートワールドのカジノエントランス=本紙撮影

 日本とシンガポールの間には多くの直行便が就航している。所要時間は7〜8時間程度で、三連休を使って訪れるとすれば、やや遠いと感じることもあるが、日本との時差はマカオと同じく1時間にとどまる。域内にIRが2つしかなく、いずれも市街中心部とのアクセスが良いロケーションため、丸1日あれば両方見て回ることができる。シンガポールの面積は東京23区とほぼ同じで、主な見どころが中心部に集中しているのは都合が良い。現地滞在時間が短い場合、郊外にある人気スポット、ナイトサファリも含めて効率良く名所巡りができる現地発ツアーの利用も検討したい。

 シンガポールはショッピング要素も充実している。マリーナベイサンズ併設のショッピングモールも含め、大型ショッピングモールが数多く建ち並ぶ。GSTという7%の消費税があるが、海外からの旅行者を対象にした免税制度も用意されている。一定の条件をクリアする必要があり、手数料が差し引かれるため実際の還付率は2〜6%程度。

●3都市の比較
 ここまで、カジノ売上トップ3の都市について、ざっと概要を紹介してきた。カジノIRを導入しているという共通点を持ちながら、それぞれ独特のバックグラウンドを持った都市であるがわかる。

 実際に旅行へ出かけるとなると、時間や予算を考慮する必要もあり、直行便があるアジアの2都市が現実的かもしれない。ただし、記者が実際に訪れてみて最も印象的だったのはラスベガスだ。IRという概念そのものがラスベガスで生まれ、発展してきた経緯がある。近年、マカオ、シンガポールのカジノ市場が急成長を遂げたのは、ラスベガスというお手本があり、成功モデルを持ち込むことができてこそだ。元祖ラスベガスでも次々新しい施設やコンテンツが登場するなど、現在進行形で新陳代謝を繰り返しており、現在のラスベガスの姿が、将来のマカオやシンガポール、さらには世界各地のカジノ都市に影響を与えることもあるとの見立てもできるだろう。

 もちろんマカオ訪問もおすすめしたい。街の活気、ダイナミズムは、ラスベガスやシンガポールを大きく圧倒する規模で、一見の価値はある。

 なお、カジノ売上トップ3の都市すべてでIRを運営している企業はたった1社、ラスベガスサンズグループのみ。3都市をめぐる際、同社の施設同士を比較してみるのも一興だ。

*記事の内容は取材当時(2016年9月)のものです。

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