最近、マカオのカジノ業に関するネガティブ報道が相次ぐ中、2ヶ月連続で月次カジノ売上が前年を下回り、加えて一部金融機関が通年カジノ売上予測を下方修正したことなどから、8月7日の香港証券取引所に上場するマカオ六大カジノ企業の株価が急落し、1日で700億香港ドル(日本円換算:約9,223億円)分が吹き飛んだ。
8月8日付地元有力紙「澳門日報」が報じた。六大カジノ企業株の急落は今年(2014年)5月のマカオのカジノをターゲットとした銀連カード使用規制が実施予定とした報道があって以来のこと。その後、6月、7月と2ヶ月連続で月次カジノ売上が2009年以来の前年割れとなり、政府高官がマカオのカジノ産業が成熟期に入ったとする見方を示すも、株式市場で大きな反応は見られなかった。しかし、近日になってカジノ従業員による待遇改善デモなどの動きが多発しており、人的資源に関する問題が新たにクローズアップされている。
ドイツ銀行の発表したレポートによると、7月のマカオのマスゲーミングカジノ(平場)の売上は上昇しているが、伸び率は6月の24%から7月には16%に減速したことに驚きを隠せないとしている。これについては、統計分類の見直しによって、一部ハイエンド・マスゲーミング顧客がVIPに組み入れられたことによるもので、ローエンド・マスゲーミング顧客についてはマカオへの渡航回数制限及びW杯による影響があったためとみられる。同行では今年下半期のマスゲーミング売上は当初予測の23%増から16%増へ、通年の累計カジノ売上を9%増から6%増へとそれぞれ下方修正している。
HSBCでは中国本土の汚職取り締まりによるマスゲーミングの成長鈍化を憂慮するとのレポートを発表。一方、大和キャピタルでは、マイナスの連鎖は続かず、8月以降のカジノ売上は上昇に転じるとの見方で、マカオのカジノに対する格付けは当面維持されるとした。
8月7日の取引ではギャラクシーエンタテインメント株が6.4%下落となり、ブルーチップ銘柄で最大の下げ幅となったほか、ウィンマカオが7.6%の急落となった。
しかしながら、今回の株価急落の原因となったネガティブ要素は目新しいものではないともいえる。中国本土における反汚職ムードの高まりについては、VIPカジノ部門に対する若干の影響があるとみられるものの、8月のカジノ売上は上昇に転じるとの予想が大方を占める。カジノ企業による人的資源問題への対応についても、自社株の分配や賃上げ、賞与の増、昇給機械の提供といった様々な人材引き止め策を打ち出しており、2015年以降のカジノオープンラッシュを見据えた先行投資であるとも受け止められる。依然としてマカオが中国唯一のカジノ都市であると言う事実に変わりはなく、カジノ運営企業自体が将来性について明るいと見ている何よりの証拠といえるだろう。
マカオの証券業者によると、六大カジノ企業株の急落は一時的なもので、ポジティブ要因への期待も高く、時間の経過とともに上昇に転じるものと予想する。