マカオの世界遺産で無許可のド派手広告撮影、中国の不動産会社=文化財の下品な商業利用に非難の声

マカオを代表する世界遺産のひとつとして知られる聖ポール天主堂跡前で、中国本土の不動産ディベロッパーが無許可でド派手なマンションの広告撮影を行ったことが明らかになり、物議を醸している。

11月27日、聖ポール天主堂跡前の大階段に中国本土の不動産ディベロッパー会社の広告撮影隊が現れ、揃いのセクシーな衣装に身を包んだ10人のキャンペーンガールを横一列に並べた上、巨大な新築マンションの宣伝パネルを設置するなどし、世界遺産をバックに広告撮影を行っていたのが目撃された。これを報じた地元中国語メディアの記事がフェイスブックなどのSNSを通じて一斉に市民の間に広がり、文化財を台無しにする下品な商業利用に対し非難の声が上がった。

世界遺産を管轄するマカオ政府文化局の呉衛鳴局長は29日、この件に関する地元メディアの取材に応じ、撮影を行った不動産会社側から文化局及び民政総署に対して事前申請などが一切なかったことを明らかにした。今回の事案は文化遺産保護法(宣伝物設置禁止)違反にあたるとし、事態を重くみて、責任の追及を含め厳格に対処すべく検討するとの考えを示した。

マカオの文化財をめぐっては、これまでにも今回同様の商業利用が複数報告されているという。呉局長は、今回の事件に対して毅然とした態度で臨むことで、抑止効果を期待したいとしている。

大航海時代からヨーロッパとアジアを結ぶ貿易港として栄え、西洋と東洋の文化の交差点とも呼ばれるマカオ。マカオ半島の旧市街地にあたるマカオ歴史地区には、ユネスコ世界文化遺産リストに登録された30もの歴史的建造物と広場が建ち並ぶ。

世界遺産は、マカオにとって重要な観光資源であるとともに、カトリック教会や道教寺院といった信仰の対象となる宗教施設も多数含まれ、地元住民にとって非常に大切な存在でもある。

聖ポール天主堂跡は、1835年の大火で大部分を焼失し、前壁と階段の一部のみを残す現在の姿となった。もともと、1602年から1640年にかけて建設されたカトリック・イエズス会の聖母教会(聖ポール教会)と教会付属の聖ポール大学のあった場所で、その工事には多くの日本人キリシタンが携わったという記録が残っている。また、天正遣欧使節団の使節としてローマに向かった伊東マンショ、千々石ミゲル、中浦ジュリアン、原マルチノも旅の途中でしばらく滞在していたなど、日本人にとって、たいへん縁の深い世界遺産だ。

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