「尖閣も沖縄も日本に属さず」法政大出身の華人歴史家=マカオ政府主催の日中関係セミナー開催、教員ら100人参加
- 2014/12/14 12:49
- 澳日関係
中国の「南京事件」国家追悼日にあたる12月13日、マカオ政府教育・青年局主催の「釣魚島(尖閣諸島の中国側呼称)と日中関係」と題したセミナーが、同局本部の講堂で開催され、マカオの政治家や教員ら100人超が参加した。
講師として招聘されたのは、マカオの歴史研究家の黄天(本名:黄錦泉)氏。主催者が配布した資料によると、同氏は1977年に日本へ留学、法政大学を卒業後、大学に留まり図書館で日中関係史を独学。日本に7年間滞在した後、香港で編集者、マカオで新聞記者や教員として勤務し、日中関係史に関する著書や論文の執筆、講演活動などを行っている。マカオ、香港で複数の支店を展開する老舗レストラン「黄枝記」のオーナーとしても知られる。
セミナーでは、後漢の光武帝が奴国(現在の福岡県にあったとされる倭人の国)に賜ったとされる「漢委奴国王印」や、日本が唐の国に留学生を送った遣唐使を例に挙げ、日本が中国の冊封体制の中にあり、中国の歴代王朝に対して「朝貢」していたとするエピソードの紹介からスタート。メインとなる20世紀以降の釣魚島(日本固有の領土である尖閣諸島の中国側呼称)に関する「争議」のパートでは、黄天氏が収集した「史料」や研究成果などを元に、独自の中国帰属論を展開した。
黄天氏は、先日発表した著作「琉球沖縄交替考」の中で、釣魚島はもともと無人島で、18世紀に描かれた「琉球三十六島図」という史料などを挙げ、琉球王国自身が勢力範囲として認識していなかったなどと指摘し、日本の「沖縄遠島論」を否定している。また、琉球王国は中国の冊封体制の中にあり、友好な「両国関係」を築いていたとし、日本が「独立国家」の琉球王国を強制的に沖縄県として自国領に編入したとしたと主張している。
セミナーを主催したマカオ政府教育・青年局によると、質疑応答では多数の挙手があり、会場は大いに盛り上がったとしている。
第二次世界大戦時、中立国ポルトガル領だったマカオは直接戦火の影響を受けなかった。現在、マカオは中華人民共和国の一部であり、香港と比較してマカオは中国本土への依存度が高いことから、中央と歩調を合わせ「反日」政策を推進するのは当然のこと受け取ることもできる。一方、マカオは中国本土や香港と比較して「親日」の市民が多いエリアとしても知られ、マカオ政府はスポーツや文化、ビジネス分野における日本との交流にも積極的であることも事実で、極端に反日政策一辺倒というわけではなく、全体的には友好的といえる。マカオ市民の日常生活の中では日本食、日本文化、日本ブランドに対する根強い人気もあり、マカオから日本を訪れる観光客も円安の進行とともに増えている。マカオの多くの市民の間では、政治的な愛国反日キャンペーンに対して冷静な見方をしているようだ。