マカオのカジノ売上低迷「中国の反汚職キャンペーンが主因ではない」=専門家見解

マカオのカジノ売上が昨年(2014年)6月から今年3月まで10ヶ月連続で前年割れとなっている。中国の習近平政権による反汚職キャンペーンや経済成長の鈍化などがその理由として語られることが多いが、専門家が明かした別の見解に注目が集まっている。

マカオ理工理工学院ゲーミング・ティーチング&リサーチ・センターの曾忠禄教授は4月18日、マカオで開催されたカジノ関連シンポジウムに出席した際、「多くの人が昨今のマカオのカジノ売上低迷要因として中国本土の反汚職キャンペーンや経済成長の鈍化を挙げるが、一定の影響はあったとしても、主要因にはならない」とし、「最大の要因は中国本土からマカオへの入境制限強化による顧客の流出である」との見方を示した。

曾教授によると、中国中央政府が反汚職キャンペーンを開始した時期は2012年12月で、マカオのカジノ売上が下落した2014年6月との間に大きなタイムラグがあることを指摘。また、中国本土における富裕層の数は増え続けているとした。

一方、マカオ政府は、カジノ売上下落が始まったのとほぼ同じ時期に当たる2014年7月から、トランジット滞在制度を活用したマカオ入境に対する制限を強化している。

マカオは1999年にポルトガルから中国に返還されたが、以降も独自の出入境管理を行っている。中国本土籍の旅客がマカオを訪れる際、個人渡航者向け入境許可証を取得するのが一般的だが、およそ2〜3ヶ月に1回といった形で一定期間内の入境回数などに制限が設定されている。しかし、トランジット滞在制度はこういった制限の影響を受けない「裏技」の入境方法として広く認知され、実際に利用されてきた。

トランジット滞在制度はマカオを経由して第三国・地域へ渡航する旅客のために設けられた「通過ビザ」に相当するもの。マカオ警察当局の資料によると、2013年には約210万人の中国本土旅客が第三国、地域のビザを添付した中国パスポートを利用してマカオに入境したという。このうち8割が実際にはビザ発給国、地域へ渡航せず、マカオ滞在のためだけに利用されたこともわかっており、本来の目的と違った形での利用が一般化していた。

2014年7月、トランジット制度を利用したマカオ滞在期間が従来の7日間から2日減の5日間に短縮され、実際に第三国、地域へ渡航しなかった場合、60日以内(従来30日)の再入境時の滞在期限は1日とし、この場合に60日以内の3度目の入境は認めない新措置が導入された。

中国本土からマカオを訪れるカジノVIP客や、VIP客をエスコートする仲介人がこの制度を多数利用していたとみられることから、以降のカジノ売上にマイナス影響を与えた可能性も十分にあり得る。

曾教授は「トランジット滞在制度を使ったマカオ入境制限が強化された後、マカオから流出した中国本土カジノ客を取り込んだ韓国やフィリピンといったカジノ国の売上が明確に上昇した」と指摘し、政府に対して入境制限の緩和を考慮するよう求めた。

カジノチップとバカラのゲーミングテーブルのイメージ(資料)—本紙撮影

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