大手金融機関がマカオのカジノ売上予測を下方修正…中国本土からのインバウンド旅客の回復スピード限定的

 マカオでは、今年1月下旬以降、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う入境制限を含む防疫対策が講じられ、インバウンド旅客数の激減。2月には防疫対策の一環としてカジノ施設の半月にわたる(2月5〜19日)一時休業もあり、再開後も現在までテーブル数を限定するなどのニューノーマル下での営業を余儀なくされている。

 マカオ政府博彩監察協調局が公表した最新データによれば、今年1〜8月累計のカジノ売上は前年同時期から81.6%減の363.94億マカオパタカ(約4828億円)にとどまる。

 目下、外地からの新型コロナ流入防止を目的とした厳格な入境制限は維持されているが、マカオ及び広東省における状況が落ち着いてきたことを受け、7月15日から両地の間で水際対策が一部緩和(新型コロナウイルス核酸検査の陰性証明書の提示などの条件付きで14日間の隔離検疫を免除)された。また、中国広東省珠海市居民及び広東省居民を対象にしたビザに相当するマカオ渡航許可(個人・団体観光旅行)の申請がそれぞれ8月12日、26日から再開。9月23日には中国本土全域に拡大したばかりだ。昨年のマカオの総インバウンド旅客数に占める中国本土旅客の割合は約7割で、両地の間の往来制限緩和がカジノ売上の回復につながるものと期待されている。

 大手金融機関の米シティはこのほど発表したレポートの中で、インバウンド旅客の回復スピードが限定的なこと及びVIPルームの構造的な問題を鑑み、今年通期のカジノ売上予測を対前年8割減、来年通期の見通しについても2019年との比較で18%減の300億米ドル(約3兆1682億円)にそれぞれ下方修正した。

カジノのイメージ(資料)—本紙撮影

カジノのイメージ(資料)—本紙撮影

 レポートの内容によれば、9月23日から中国本土全域でマカオ渡航許可の申請が再開されたが、セルフ式のキオスク型端末によるサービスはストップし、政府における審査余力が限定的なものになっているとのこと。広東省の例として、461ヶ所ある証明書センターのうち営業しているのは220ヶ所で、1日あたりの処理能力は7700件の申請にとどまり、通常の広東省からの訪マカオ旅客数を大きく下回っているという。コロナ以前にはキオスク端末で24時間即時申請が可能だったが、現状では渡航許可発給数が限られ、中国本土からのインバウンド旅客の増に影響が及ぶとした。

 また、最近同行がVIPルームの代理及び仲介業者と接触したところ、彼らは経営環境がどんどん厳しさを増していると認識しているものの、大部分の仲介業者の財務状況は安定していることがわかったという。

 短期的にマカオはインバウンド旅客数が限定的であること、VIPルームのビジネス嬢の構造的問題によって、同行では今年末までに残された時間の中でのカジノ売上の増には悲観的で、第4四半期のカジノ売上見通しは前年同期比74%減、内訳はVIPルーム部門が79%減、ますゲーミング部門(いわゆる平場)が71%減とした。この予測通りに進捗すれば、今年通期のカジノ売上は対前年8割減となる。また、同行は来年のカジノ売上予測についても従来発表のものから9%下方修正、2019年比で18%減の300億米ドルとした(約3兆1682億円)。

 なお、同行では、短期的には困難に直面するが、マカオのパフォーマンスに対して依然楽観視しており、マカオ渡航許可申請再開後、中国本土旅客からの旅客はマカオに戻るとした。仮に今後新型コロナの次の一波がなければ、次の春節(旧正月)前までにマカオ渡航許可申請手続きは完全に元に戻る見込みで、来年のカジノ売上予測の中でVIPルーム売上は2019年の3分の2までの回復にとどまるが、マスゲーミング部門については92%にまで回復することを織り込んだとのこと。

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