マカオ、10月のカジノ売上は対前年4割減の約618億円…年初来最低

 マカオ政府博彩監察協調局(DICJ)は11月1日、今年(2021年)10月のマカオの月次カジノ売上(Gross Gaming Revenue=GGR)について、前年同月から40.0%減、前月から25.8%減となる43.65億マカオパタカ(日本円換算:約618億円)だったとする最新統計を公表。

 前年同月比では実に9ヶ月ぶりのマイナスに。前月比では2ヶ月ぶりに下落となり、年初来最低を更新した。

 マカオでは、昨年1月下旬から現在に至るまで入境制限を含む厳格な水際措置が講じられており、平年と比較してインバウンド旅客数が大幅に落ち込んでいる。ただし、昨年第3四半期以降は中国本土との往来制限の緩和が進み、カジノ売上の回復につながった。しかしながら、今年5月下旬にマカオと隣接する中国広東省、7月下旬には中国本土各地で新型コロナの再流行が出現。8月初旬及び9月下旬から10月初旬にかけてはマカオ域内でも市中感染確認例が相次いだ。こういった事情から、入境制限を含む各種水際措置が一時的に強化されたことによるインバウンド旅客減が6月、8月、9月、10月の売上に影響を与えたとされる。ただし、今夏以降の再流行はそれぞれ約1ヶ月で終息し、水際措置も従前の水準まで緩和されたが、カジノを含むマカオのツーリズム業界にとって書き入れ時となる夏休み(8月)及び国慶節大型連休(10月初旬)は立て続けに不発に終わった。

 10月の1営業日あたりの平均売上は1.41億マカオパタカ(約20.0億円)。新型コロナの影響が生じて以降の推移は、昨年2月(2月5〜19日の休業期間を除く14日間)2.22億マカオパタカ(約31.4億円)、3月1.70億マカオパタカ(約24.1億円)、4月0.25億マカオパタカ(約3.5億円)、5月0.56億マカオパタカ(約7.9億円)、6月0.23億マカオパタカ(約3.3億円)、7月0.43億マカオパタカ(約6.1億円)、8月0.43億マカオパタカ(約6.1億円)、9月0.74億マカオパタカ(約10.5億円)、10月2.35億マカオパタカ(約33.3億円)、11月2.25億マカオパタカ(約31.8億円)、12月2.52億マカオパタカ(約35.7億円)、今年1月2.59億マカオパタカ(約36.7億円)、2月2.61億マカオパタカ(約36.9億円)、3月2.68億マカオパタカ(約37.9億円)、4月2.80億マカオパタカ(約39.6億円)、5月3.37億マカオパタカ(約47.7億円)、6月2.18億マカオパタカ(約30.9億円)、7月2.72億マカオパタカ(約38.5億円)、8月1.43億マカオパタカ(約20.2億円)、9月1.96億マカオパタカ(約27.7億円)。昨年第2四半期が底で、以降は今年5月にかけて回復が進む様子が見てとれる。

 今年1〜10月累計のカジノ売上は前年同時期から57.3%増の721.52億マカオパタカ(約1兆0211億円)。ただし、変動率は前月時点から18.3ポイントの大幅下落。

 DICJは新型コロナ防疫体制下におけるカジノ営業にあたって運営会社に対して従業員及びゲストの健康を最大限保護することなどを求めており、ゲーミング(カジノ)テーブル間の距離の確保、テーブルゲームでは隣席を空ける対応(例えばバカラテーブルでは1テーブルに同時に着席できるのは3〜4人)、スロットマシンについても1台または2台おきの稼動と定められ、交差感染リスク軽減が図られている。チップ等のゲーミング用品に対する消毒も強化実施されている。再開したといっても、あくまで限定的ものだ。

 また、ゲストは入場時にマスクの着用、検温、有効な健康コード(衛生当局の専用サイト上で直近の滞在歴、新型コロナ患者との接触歴の有無、発熱や咳といった症状の有無、連絡先を入力して生成されるQRコード)の提示が義務付けられている。3月3日から新型コロナウイルス核酸検査陰性証明書の提示を必須とする措置は撤廃された。

 なお、昨年通期のカジノ売上は前年から79.3%減の604.41億マカオパタカ(約8554億円)で、2年連続前年割れ。マカオ政府の2021年度財政予算におけるカジノ売上見込みは1300億マカオパタカ(約1兆8397億円)。ただし、ここ数ヶ月は失速しており、予算達成は厳しい状況で、政府が下方修正を行う考えを示している。

ゲスト及び従業員のマスク着用やカジノ用品の消毒強化といった防疫対策を講じた上で営業を続けているマカオのカジノ施設(資料)=2020年3月(写真:GCS)

【資料1】2021年のマカオの月次カジノ売上の推移(カッコ内は前年比)
・1月:80.24億マカオパタカ=約1136億円(63.7%減)
・2月:73.12億マカオパタカ=約1035億円(135.6%増)
・3月:83.06億マカオパタカ=約1176億円(58.0%増)
・4月:84.01億マカオパタカ=約1189億円(1014.4%増)
・5月:104.45億マカオパタカ=約1478億円(492.2%増)
・6月:65.35億マカオパタカ=約925億円(812.5%増)
・7月:84.44億マカオパタカ=約1195億円(528.1%増)
・8月:44.42億マカオパタカ=約629億円(234.0%増)
・9月:58.79億マカオパタカ=約832億円(165.9%増)
・10月:43.65億マカオパタカ=約618億円(40.0%減)
>1〜10月累計:721.52億パタカ=約1兆0211億円(57.3%増)

【資料2】2013年〜2019年のマカオの年間カジノ売上の推移(カッコ内は前年比)
・2013年:3607.49億マカオパタカ=約5兆1057億円(18.6%増)
・2014年:3515.21億マカオパタカ=約4兆9751億円(2.6%減)
・2015年:2308.40億マカオパタカ=約3兆2671億円(34.3%減)
・2016年:2232.10億マカオパタカ=約3兆1591億円(3.3%減)
・2017年:2657.43億マカオパタカ=約3兆7611億円(19.1%増)
・2018年:3028.46億マカオパタカ=約4兆2862億円(14.0%増)
・2019年:2924.55億マカオパタカ=約4兆1392億円(3.4%減)
・2020年:604.41億マカオパタカ=約8554億円(79.3%減)

関連記事

最近の記事

  1.  冬のマカオの街を美しく彩る毎年恒例のイルミネーションイベント「ライトアップマカオ2024(中国語…
  2.  マカオ政府統計・センサス局(DSEC)は11月21日、今年(2024年)10月の訪マカオ外客数(…
  3.  マカオを中心にアジア、欧州で統合型リゾート(IR)施設の開発・所有・運営を行うメルコリゾーツ&エ…
  4.  マカオの新交通システム「マカオLRT(Light Rapid Transit)」を運営する澳門輕…
  5.  マカオ政府統計調査局は11月20日、今年(2024年)1〜9月の小売業販売額調査結果を公表。 …

ピックアップ記事

  1.  マカオで統合型リゾート(IR)を運営するサンズチャイナと米国のホテル大手マリオットインターナショ…
  2.  マカオ政府は6月17日、政府がコタイ地区の南東部に位置する約9万4000平米の国有地を活用し、約…
  3.  マカオ政府旅遊局(MGTO)が国際旅客誘致策の一環として今年(2024年)1月1日から実施してい…
  4.  マカオの新交通システム「マカオLRT(Light Rapid Transit)」を運営するマカオ…
  5.  マカオのマカオ半島側とタイパ島を結ぶ4番目の跨海大橋となる「マカオ大橋(澳門大橋/Ponte M…

注目記事

  1.  日本の三菱重工業は2月29日、マカオ政府公共建設局(DSOP)から、マカオLRT(Light R…
  2.  去る12月23日夜、日本の歌手・近藤真彦さんがマカオ・コタイ地区にある統合型リゾート「MGMコタ…
  3.  日本も出場した女子バレーボールネーションズリーグ(VNL)予選第2週のマカオ大会が5月28日から…
  4.  豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノが目立つマカオだが、実は競馬、サッカー及び…
  5.  マカオ治安警察局は3月5日、東京などからマカオへ向かう航空機内で窃盗を繰り返したとして中国人(中…
香港でのビジネス進出や会社運営をサポート

月刊マカオ新聞

2024年11月号
(vol.137)

マカオに取材拠点を置くマカオ初、唯一の月刊日本語新聞「マカオ新聞」。ビジネスと観光、生活に役立つ現地マカオ発の最新トピックを月刊でお届けいたします。記事紹介及び閲覧はこちらへ。

ページ上部へ戻る
マカオ新聞|The Macau Shimbun